建物Q&A 大規模修繕の修繕周期を18年に出来るのか(2021年4月号掲載)
Q
最近新聞でマンションの大規模修繕周期を12年毎から18年毎にする修繕サービスを管理会社が発表していましたが、どの様な方法で修繕周期を延ばすことが可能なのでしょうか?その管理会社に頼まないと出来ないのでしょうか?修繕周期を延ばすことにより修繕積立金を軽減できるのでしょうか?
A
大規模修繕工事の周期は、2008年に国土交通省監修で工学系大学教授やマンション管理組合支援団体・建築家団体・マンション管理業団体等が意見を出し合い編纂した『長期修繕計画標準様式・作成のガイドライン』で大規模修繕工事の周期を12年とされ、12年周期を採用している事例多く、また適正であるとの判断されたもと思います。これは、コンクリート躯体のひび割れや錆び鉄筋露出現象などが目立ち始め、外壁塗装などが退色や汚染・剥離など劣化してくる時期が12年目頃であることから採用された周期と考えられます。
では、12年周期を18年周期にするにはどのようにすれば良いかですが、18年位耐候性のある外装の主要材料である塗装材やシーリング材・防水材を使うことです。
外壁塗装材はフッ素樹脂系塗料を使えば18年位耐用します。シーリング材は表面を塗装してやるかシリル化アクリレート系シーリングは塗装無しでも18年位耐用するとされています。
防水材については、屋根防水等は従来から適切に施工をすれば20~25年位耐用します(途中部分補修や保護塗装の塗替えは必要ですが)。また、バルコニー床等のウレタン塗膜の簡易防水も保護塗装をフッ素樹脂系を使用し、適切な塗膜厚を確保すれば18年位耐用します。
しかし、塗装が18年の耐候性があっても、コンクリート躯体にひび割れが発生すると塗装もひび割れてしまい、早めの修繕が必要になってしまいます。そこで塗装表面にひび割れが伝わらないように、塗装の下塗りをひび割れに追従する弾性のある材料を使います。尚、高弾性塗料は膨れ事故が起きやすい材料なので、注意が必要です。
これらの高耐候建材や高弾性建材を駆使し、修繕周期を延伸する手法があります。適正な材料を選定(設計)し、適正な工事をする工事会社であれば、どこに頼んでも可能な手法です。
修繕周期12年を18年にすると、単純計算で修繕費が12/18=0.66倍となり、それに高耐候・高弾性材料を採用した工事費が一般材料での工事費の1.5倍以下であれば修繕積立金の軽減になります。
しかし、この手法は全ての建物に有効なわけではありません。外壁がタイル仕上のマンションでは、18年間タイルが割れたり浮いたりするのを防止するのは困難であり、東京都内では10年毎に外壁タイルの落下危険部の全面打検(あるいは赤外線探査)を条例で義務付けています。調査結果で著しくタイルに割れや浮きがある場合は、放置できませんので、18年経過前に大規模修繕工事を行う事になります。
よって、そのマンションに応じて、高耐久建材使用し、経年による経過を確認しながら、大規模修繕の修繕周期の延伸を試行して見ることが望まれます。
回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年4月号掲載)