Q&A 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため定時総会を延期することは可能か?(2020年5月号掲載)
Q
私たちのマンションでは毎年5月に定時総会を開催しています。新型コロナウイルスの感染拡大から集会を延期した方が良いという意見もありますが、延期は可能でしょうか。
また、開催する場合にいつも借りている近くの公民館は広くないので、例年通りの開催方法だとかなり密集した空間になります。例えば、出席する人数を絞ることはできるのでしょうか。
A
標準管理規約では「理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始後2か月以内に招集しなければならない」と規定しています。これは義務規定です。
但し、正当な理由があれば時期を延期することは可能です。例えば、開催場所の施設が都合で使えなくなり、代替場所を探す必要が生じたり、自然災害で停電しているなどの理由は延期する正当な理由になります。
今回の新型コロナウイルス感染拡大による延期も正当な理由として認められると思います。
他方で、新型コロナウイルスの影響を理由に年1回行うべき総会を今年は開催しないという対応はできないと考えます。予算案を可決しないとそれに基づく執行ができなくなり、管理に著しい支障が生じることからも総会を開催しないという対応は難しいと思います。
そこで、新型コロナウイルスの対策をとった上で、総会を開催することを検討することになります。
まず、定時総会は開催するが、組合員に対しては、出席を控えて、議決権行使書ないし委任状による意思表示を強くお願いすることを検討してください。
極論すると出席者がいないことが理想です。この場合運営する側も参加する人数を絞ることを検討してください。
会場で議案について質問したいという考えを持っている組合員もいるので、その点は事前に議案に対する質問を受け付けて、適宜の方法で回答するという対応をとることで、会場参加を控えてもらうように強く求めるとともに質問には事前に丁寧に回答することで議決権行使書や委任状の提出をお願いしてください。
それでも、総会を開催する以上は出席を求める組合員に対して一切出席を認めないという対応をとることは困難です。但し、出席する組合員がいる場合に所謂ソーシャルディスタンスをとるために出席する組合員の数を制限することは許されます。その場合は出席希望者は事前に申し出ること、人数が多くなった場合は抽選等で出席を認める者を選択することなどを伝えておくべきです。
なお、出席者を分散するために総会を午前と午後の2回に分けて開催することはできるかという問題もありますが、筆者としてはできないと考えています。どうしても、出席者を分散する必要がある場合は会場を分散して、ビデオやモニター、インターネット等を利用したライブ配信することを検討してください。
会場の入口で検温を求めて、発熱がある場合や咳の症状がある場合に入場を拒むことも許されますし、マスク着用を求めることも可能です。
また、合理的な範囲で総会の時間を短縮することも可能ですし、感染リスクの観点からもその方が望ましいと思います。
議案書の説明を省略することや質疑応答の時間を限定することが考えられます。そのためにも、事前の質問を受け付けてそれに回答するという前述した対応は大切です。
組合員の多数の参加のもとで活発な議論をすることが総会のあるべき姿であることは異論ありません。しかし、新型コロナウイルスの感染リスクが生命に関わる緊急事態であることから、新型コロナウイルスが終息するまでの総会は例外的な運用で行うことは許されます。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年5月号掲載)
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