議事録の閲覧やコピーは組合員の要望に応じていいのでしょうか?(2007年5月号掲載)
Q
今度新しく組合員になったAさんから、総会議事録のコピーをもらいたいと言われています。また、Cの部屋が売りに出ているようで、仲介業者である不動産会社のBさんが総会議事録を見せて欲しいと言っています。AさんやBさんの要求に応じなければならないのでしょうか。
A
まず、自分たちの管理組合の規約を確認してみましょう。規約に議事録の閲覧についての規定があれば、その内容に従うことになります。一般的には標準管理規約に依拠した形で「理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。」と規定していることが多いと思います。
そうするとAさんは組合員ですから、総会議事録を閲覧する権利はあることになります。では、Aさんにコピーまで認めなければならないのでしょうか?この点についてはAさんに認められている権利は「閲覧」であり、閲覧する権利にはコピー(謄写)する権利までは含まれていないと考えられます。実際上もコピーする権利まで認めてしまうと、仮に、閲覧する対象の書類が多くなればコピーをする費用と時間もかかり、管理組合の負担は大きくなってしまいます。
したがって、Aさんのコピーの要求は拒否することができます。
但し、Aさんが指定場所で閲覧するときに、デジタルカメラ等で撮影することを妨げることは出来ないというべきです。管理組合の負担という点では「閲覧」をさせた場合と異ならないからです。
また、管理事務所などにコピー機が置かれてあり、それを有料でAさんに利用させることはかまいません。この場合も管理組合の負担はほとんどないと考えられないからです。ただ、Aさんにはコピー機を使用させて、仮にDさんが来たら認めないという扱いは不公平になります。コピーを認める場合にはそのルールを定めておくべきです。
では、Bさんの場合はどうでしょうか?利害関係人には閲覧の権利がありますので、仲介業者のBさんが利害関係人と言えるかが問題となります。
単なる仲介業者は利害関係人には含まれません。もっとも、居室を購入しようと検討している人は、組合員になろうとする者ですから、利害関係人に含まれると考えられます。したがって、Bさんが利害関係人(居室の検討を購入している人等)から委任を受けて閲覧を求めているのであれば、コピーについては拒否することは出来ますが、閲覧についてはBさんの要求を拒否することはできないと考えるべきです。
念のため、説明すると、仮に規約の中に議事録の閲覧に関する規定がなくても、本件設問の結論は変わりません。というのは規約に規定がない場合は区分所有法の規定が適用されることになりますが、区分所有法では組合員や利害関係人が議事録を閲覧する権利を定めているからです。
偶に規約に規定がないものについては拒否できると単純に考えている人がいますが、区分所有法に規定されている権利は認めなければならないことには注意してください。
回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2007年5月号掲載)