管理組合を法人化すると、どの様なメリットがあるか? (2009年1月号掲載)
Q
最近、近所のマンションの管理組合が法人化したそうです。私達の管理組合も法人化したらどうか、という意見も出ています。管理組合を法人化するとどのようなメリットがあるのですか。
A
管理組合を法人化するとメリットとしては
(1)管理組合が法人として権利義務の帰属主体になることによって法律関係が明確になること
(2)管理組合の財産と区分所有者の財産の区別が明確になることなどがあげられます。
但し、法人化されていない管理組合であっても
(1)団体としての組織を備え(2)多数決の原則が行われており(3)構成員の変更にもかかわらず団体が存続して(4)組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している場合は権利能力無き社団として、構成員とは別に法律関係の当事者となることができます。
そして、通常のマンションの管理組合は上記(1)から(4)の要件を充足しており、権利能力無き社団として扱われますので、対外的な法律関係の当事者となることはできますので、法人化しないと(1)のメリットを享受できないわけではありません。また、預金口座についても管理組合名義での預金口座を認めてくれる金融機関もありますので、(2)のメリットもそれほど大きなものではないといえます。
他方で、管理組合が法人化すると管理組合法人名義での不動産登記を行うことができます。法人化していないと代表者個人名義とか組合員個人名義で登記せざる得ませんが、登記名義人に相続が発生するなどした場合には名義変更に際してトラブルが生じる可能性があります。
したがって、管理組合で不動産を取得する場合などは管理組合を法人化しておけば管理組合自身の名義にすることが可能なのでメリットはあります。
但し、現実に管理組合が不動産を取得するケースはそれほど多くないと思われます。そのように考えると現時点では管理組合を法人化するメリットはそれほど高くはないといえるでしょう。
もっとも、大規模修繕等に際して、これまでの修繕積立金では足りず、金融機関から借入をしたり、金額の大きな請負工事を発注する場合には、管理組合が法人であった方が融資を受けやすくなったり、発注をしやすくなるなどの事実上のメリットもあります(法人格がないと融資を受けられないとか、請負契約を締結できないわけではありませんが、相手方から見れば契約の主体が明確になり、安心感があるので応じやすいということです)。
将来を見据えて法人化することは検討に値します。
他方で、法人化するためには費用もかかりますし、理事長が替わる都度登記簿の理事長名義の変更手続が必要になるなど手間が増えることも事実です。
これらのメリットとデメリットを比較して検討すると良いでしょう。
法人化の具体的な手続については次回解説したいと思います。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川貴康
(2009年1月号掲載)