「管理組合がシェアハウス利用を拒否できるか?」(2013年9月号掲載)
Q
私達の近隣のマンションの役員さんからマンションの一室がシェアハウスとして使われていて困っているとの話をされました。私達のマンションではまだそのようなことはありませんが、管理組合としてシェアハウスとしての利用を拒否することはできるのでしょうか。私達のマンションの規約は標準管理規約とほぼ同様です。
A
シェアハウスとは広い意味では一つの住居を複数人で共有することを言いますが、ここで問題とするのはマンションの専有部分の一室を区画して、複数人に賃貸するような形態のことです。
標準管理規約では専有部分の範囲については「天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする」と規定しています。つまり、天井、床及び壁については躯体部分は共用部分ということになります。シェアハウスとして使用するのであれば、専有部分の内部を改装(リフォーム)する必要があると思いますが、もし、区分所有者がシェアハウスとして利用するために躯体部分に影響を与えるような工事(リフォーム)を無断で行うのであれば、規約違反行為となります。また、このように躯体部分に影響を与える行為は区分所有法6条1項の「共同の利益に反する行為」にも該当するので、工事の停止や原状回復あるいは場合によっては居室の使用禁止を求めることも可能です。では、躯体部分に影響を与えない工事(リフォーム)を行った上でシェアハウスとして利用しようと企てている場合はどうしたら良いでしょうか。
ところで、リフォームついては使用細則でそのルールを定めているマンションも多いと思います。通常は書面で理事会に申請して許可を得ることになっている場合が多いと思います。
そこで、区分所有者がシェアハウスに利用することを前提にリフォーム工事の申請をした場合は理事会で拒否することが考えられます。しかし、正当な理由なく不許可とすることはできません。
標準管理規約では「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」との規定があります。この規定を根拠にシェアハウスの使用を止めることはできないでしょうか。
この規定は区分所有者が自ら居住する必要はなく、専有部分の利用方法について、それがもっぱら日常的な寝食のための居住用建物としての平穏さが確保されるべきものであることを意味するものと解されていますので、区分所有者が当該専有部分を居住用借家として賃貸することはこの規約に違反しないと考えられています。シェアハウスも居住用借家としての一形態ですから、規定だけでは排除が難しいと思われます。
また、より根源的な問題として居室を特定の第三者に賃貸することを禁止することはできないと考えられるので、シェアハウスが賃貸の一種だとすれば、(違法なリフォーム工事を行わないのであれば)シェアハウスとしての利用を禁止することもできないという専門家の意見もあるようです。
筆者もただ単に「シェアハウスとしての利用は禁止する」という規約では禁止することの正当性を確保することは難しいのではないかと考えていますが、何らの規制も許されないとは考えていません。シェアハウスとしての利用により、具体的に発生が予測される不都合を検討して、それを規約や細則で規制することは可能であると思います。
回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川 貴康
(2013年9月号掲載)