「昼夜問わず大声を出す居住者のBさん 管理組合として何か手立てはありますか」(2015年1月号掲載)
Q
私達のマンションの3階に住んでいるBさんは部屋の壁を叩いたり、ベランダで大声を出して、意味不明の言葉を発しています。エレベータのボタンなども乱暴に取り扱い、それを理事さんが注意すると今度は理事さんの実名をあげて誹謗中傷する発言をしています(Bさんは精神病院に入院していたという噂もあります)。ガス管の検査や配管の清掃のために室内に立ち入ることも拒否されています。
この部屋の名義はBさんの父親であるAさんになっています。Aさんはマンションから3キロ程度離れたところに住んでいます。昼夜を問わず大声を出すので周囲の人も精神的にまいっています。管理組合としては父親であるAさんにBさんを引き取ってもらえないかとお願いしましたが拒否されました。管理組合として何かとりうる手段はありますか。
A
本件では組合員であるAさんは外部居住者であり、組合員ではないBさんが住んでいます。AさんとBさんは親子ですから、Bさんはタダで住んでいるでしょうから、AさんとBさんの契約は使用貸借であると思われます。
Bさんの一連の行為は「区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」という区分所有法6条1項に該当すると考えられます(区分所有法6条3項は占有者にも1項の規定が適用されることを定めています)。
管理組合としては区分所有法57条に基づいてBさんに対して共同の利益に反する行為の停止を求めることができます。
しかし、それでもBさんの迷惑行為が継続されることも十分に考えられます。その場合には何らかの手段でBさんをマンション(専有部分)から追い出す必要が高いでしょう。
区分所有法60条1項は「区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは~集会の決議に基づいて、訴えをもって~占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる」と規定しています。
この規定に基づいて管理組合としては所定の手続(弁明の機会の付与、総会決議)を経てAさんとBさんとの間の使用貸借契約の解除と専有部分の引き渡し請求を求める訴訟を提起することができます。この請求が認められるとBさんはAさんに専有部分を引き渡さないといけなくなります。
しかし、AさんとBさんは親子ですから、一旦判決に従って引き渡しをした後にまた契約を締結してBさんを住まわせることも考えられます。
そこで、管理組合として検討すべき手段が区分所有法59条に基づく競売請求です。
過去の裁判例でも使用貸借契約の解除と引き渡し請求と59条に基づく競売申立請求を同時に提起して、いずれも認められた事案があります(東京地方裁判所平成17年9月13日判決)。
59条は区分所有権を剥奪する強力な手段ですからその要件を充たすか否かは裁判所においてもかなり慎重に判断されます。経験のある弁護士に相談して、裁判に耐えうるだけの証拠を事前に集めておくことが大切です。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(2015年1月号掲載)