改正標準管理規約に合わせた方が良いのか?(2016年5月号掲載)
Q
マンションの標準管理規約が改正されたと聞きました。私達のマンションの規約は標準管理規約とほぼ同じものです。私達のマンションの規約も標準管理規約の改正に合わせる形で改正した方が良いのでしょうか。
A
平成28年3月14日、マンション標準管理規約が改正されました。改正された新しい標準管理規約は国交省のホームページ等で見ることができます。改正点は幾つかありますが、マスコミ等で報じられたものとしてコミュニティ条項の見直しがありますので、今回はこの点について少し意見を述べたいと思います。
従前の標準管理規約32条(単棟型)では管理組合の業務内容を規定しており、その15号には「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティの形成」という条項がありましたが、今回の改正でこれが削除されました。今回の改正でコミュニティ条項が削除されたのは、この規定があることで例えば管理組合の活動と自治会や町内会の活動を混同することで、トラブルが発生していた実態があることが理由とされています。
確かに、これまで一部の管理組合で管理組合が自治会費や町会費を強制的に徴収したり、何らの問題意識もなく管理費から自治会や町内会に経費の支払いをする事でトラブルや紛争が発生し、裁判上争われ管理組合側の主張が認められなかった事案も複数存在します。
しかしこのような間違った運用が生じないように注意を払い、適正な運用をしているのであればコミュニティ条項について特に削除する必要はないと思います。
例えば、阪神淡路大震災や東日本大震災後、自治体と企業が防災に関する協定を締結することが広まっていますが、大規模な災害を考えれば、当該マンションだけではなく隣接する周辺のマンションの管理組合と共同で防災対策等を検討することが望ましい場面もあります。
管理組合毎に協定を締結することもありますが、周辺のマンションの管理組合が集まって地域でマンション連合会のようなものを作って防災対策を検討している管理組合もあるようです。
このような活動は管理組合の業務に当然含まれますし、日常的なコミュニティの形成が防災対策に有益であることは疑いがありません。
ところで、今回の改正で従来の標準管理規約32条の12号「風紀、秩序及び安全の維持に関する業務」と13号「防災に関する業務」をまとめて修正する形で改正後の12号では「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに住環境の維持及び向上に関する業務」と規定しています。
先に述べたような防災対策のための活動は改正後は12号に含まれるものと考えているようですので、標準管理規約のとおりに改正しても問題はないことになります。
他方で、そもそも、標準管理規約は具体的な管理規約を定める際の一つのモデル案(ひな形)に過ぎません。単純に標準管理規約が改正されたからそれに合わせると言うことではなくむしろ当該マンションの実情に合わせてモデル案である標準管理規約を修正する位の考え方の方が妥当だと思います。
他の改正点については次回以降コメントしたいと思います。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(2016年5月号掲載)