隣地にマンション建設予定。日当たりを守る為に管理組合として何ができるでしょうか?(2016年7月号掲載)
Q
私が管理組合理事長をしているマンションの隣に、新たに別のマンションが建設予定であると聞きました。建設予定地は、もともと平屋2階建ての古い民家が建っていただけなので、そこに新しいマンションが建つと、私たちのマンションの日当たりが悪くなるのは確実です。そこで、日当たりを守るために、管理組合として何ができるでしょうか。
A
住居の日当たりの利益を受ける権利は、一般に日照権とよばれ、住居の財産的価値や人格権に由来する権利として、法的権利として認められています。
しかし、限られた土地の上に人々が暮らしている以上、全員が、まったく影のできない日当たりを確保することは不可能です。そこで、日照権も、一定の制約を受けることになります。したがって、これまで得られてきた日照時間が、新しいマンションが建つことによって短くなっても、それだけで直ちに日照権が侵害されるので違法だ、と言うことはできません。
では、いかなる場合に日照権が侵害されるとして違法となるのでしょうか。この点については、ある数値を超えたら違法というような単純明快な基準はありません。新しいマンションが建つことにより、あなたのマンションの住民が受忍限度を超える被害を受ける場合に、違法となります。そして、この受忍限度の判断に当たっては、被害の程度、周辺一帯の地域性、新しいマンションの設計変更による被害回避の可能性、その建築を巡る交渉経過などの諸事情を総合考慮して決めることになります(松山地方裁判所平成5年9月30日決定(判例時報1485号77頁)。そして受忍限度を超える場合には、新しいマンション建築の差し止め請求が認められます。
以上を前提に、管理組合として何をすべきかを考えます。まずは、事前交渉が極めて重要です。建築主や施工業者に説明会の開催を求めるなどして交渉します。建築主は条例により、一定の場合に説明義務があります。
まず、説明会では、マンションが建つことにより、あなたのマンションの日当たりがどのように変わるのか、具体的に説明を求めて下さい。日影図をみせてもらっただけでは、なかなか具体的なイメージは湧きにくいかと思います。関係する住民全員が、自分たちの居室等の日当たりがどう変わるのかを具体的にイメージできるまで、根気強く説明を求めましょう。
ところで、建築基準法は、建築物が、日照権の不当な制約とならぬように、建築物の形態に一定の規制をしています。新しいマンションが、この規制に違反しているのであれば、一般に、受忍限度を超える可能性が高くなります。
他方で、建築基準法や条例に違反していないからといって、直ちに受忍限度の範囲内とされるわけではないことに注意して下さい。建築基準法等に違反していなくても、受忍限度を超え、差し止め請求が認められることもあり得ます。
ですので、建築主側から、建築基準法上の基準を満たしているとの説明を受けたとしても、そこであきらめるのではなく、先ほど述べたように、まずは、日当たりの変更を具体的にイメージできるまで、説明を求めることが重要です。
住民全員が、日当たり変更の具体的イメージができれば、管理組合の足並みも揃いやすくなると思います。受忍限度を超えるとは言えない場合であっても、交渉次第で、設計の一部変更や補償金を勝ち取れるかもしれません。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(2016年7月号掲載)