標準管理規約改正「外部専門家」(2016年9月号掲載)
Q
マンションの標準管理規約が改正されたと聞きました。私達のマンションの規約は標準管理規約とほぼ同じです。私達のマンションも改正に合わせて改正した方が良いのでしょうか。
A
前回(7月号)はコミュニティ条項に触れたので今回は外部専門家について触れます。従来の標準管理規約35条2項は「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する」と規定していました。今回の改正でもこの規定はそのままで、外部専門家を役員として選任する場合は「理事及び監事は、総会で選任する」「組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める」という規定を置くことを提案しています。
外部専門家の活用については従来の標準管理規約でも34条の規定がありますが、今回の改正のような規約を置けば外部専門家を直接理事や監事に選任することができるようになります。理事や監事を組合員に限る規定をおいて役員のなり手がいなくて困っている管理組合は少なくありません。その場合でも役員の資格を組合員(専有部分の所有者)だけでなく、その家族や同居人まで広げることで対応している管理組合が多いと思います。
マンションの管理に最も利害関係を持つのが組合員ですので、管理組合の運営に携わるべき役員についてもできる限り、組合員から選任する。あるいは組合員と同居している家族等から選任することが望ましいと思います。また、多くの場合は外部専門家を直接役員としなくても、専門的知識が必要となる場面について管理組合が外部専門家に依頼することで対応が可能だと思います。他方で、リゾートマンションのように組合員の大半が外部所有者である場合などは専門家を直接役員とすることを検討しても良いでしょう。
筆者の同業の弁護士から聞いた話として、極めて対応が難しい組合員がいて、管理組合の理事長に攻撃(社会常識を越えた激烈なクレームだったようです)の矛先を向けていたことから、理事長のなり手がいなくなっているマンションで(今回の改正のように)外部の専門家を役員として選任することができるように規約を改正して、理事長に弁護士を選任した上で法的手段を含めた対応を行ったことがあるそうです。
一般的には弁護士を管理組合の代理人に選任すれば相手方の組合員も弁護士と交渉することが多いのですが、理事長が管理組合を代表する立場にあることは変わりませんので、特殊な考えを持つ組合員が理事長にクレームを申し入れることを止めなかったという経緯があるようです。
極めて例外的な場合ですが、外部専門家を役員に選任する必要性が認められる場面の一つと言えると思います。このような場合に備えてあらかじめ規約を改正しておくことは検討しても良いと思います。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(2016年9月号掲載)