部屋をシェアハウスにしているAさんに使用を止めさせたい(2017年3月号掲載)
Q
区分所有者であるAさんは、その専有部分である〇〇〇号室に、多くの間仕切りを設置して、小さな区画をたくさん作っています。そして、その区画一つにつき一人を居住させる形で、多数の人に貸し出しています。管理組合としては、防犯上の心配もありますし、火災のおそれも大きく、非常に不安です。Aさんのこのような使用を止めさせることはできますか。
A
Aさんのように、1つの住宅を複数に区画して複数の人に貸し出すことは、最近、シェアハウスと呼ばれて注目を集めています。住宅の所有者としては、1つの住宅を多人数に貸し出すことができるため、多くの賃料収入が期待できる反面、特にマンションの1居室でシェアハウスが行われた場合は、防犯や利用マナーなどの点で他の住民に不安を与えるなど、問題点も指摘されています。
多くのマンションでは、専有部分の使用を『住宅』に限定する規約が定められています。では、シェアハウスは『住宅』としての使用といえるのでしょうか。
ご質問と類似の事案で、東京地裁平成27年9月18日判決は、「本件マンションの分譲時には、快適な住環境やオートドアロックシステムによる安全性の確保が本件マンションの特色として強調されており、各専有部分の間取りも、全戸南向きのワンルーム、1DK又は2DKとして設計されていて、その構造からすれば、各戸をそれぞれ単身者又は一つの生活共同体として継続的に同居生活を営む者らが生活の本拠として使用することが想定されていることが明らかであり、本件管理規約12条(専有部分の使用を『住宅』に限定する規約)にいう『住宅』とはそのような使用態様を意味するものであると解される。
ところが、…本件建物(シェアハウスとして使用された専有部分)は、玄関、便所、洗面所、浴室及び台所を除く部分が床面積各2畳程度の10区画に区切られた形に改装された上、同時並行的に締結された複数の賃貸借契約に基づき入居した者らが、それぞれ前記区画部分の一つで寝起きし、便所、洗面所、浴室及び台所を他の入居者と共同で使用している状態にある。全く見知らぬ者同士を含む最大10名の者が、多くは窓もない僅か2畳程度のスペースで寝起きするという使用態様は、本件マンションの専有部分の使用態様として想定されているところからは程遠く、本件管理規約12条にいう『住宅』には当たらないというべきである。」との判断をしました。
つまりこの判決は、専有部分の使用を限定する『住宅』の意味を、「単身者又は一つの生活共同体として継続的に同居生活を営む者らが生活の本拠として使用する態様」と解して入居者の類型に限定を加え、「全く見知らぬ者同士を含む最大10名の者が、多くは窓もない僅か2畳程度のスペースで寝起きするという使用態様」を、『住宅』ではないと判断しました。そして結論として、規約違反のときの理事長による差止め請求等を認め(標準管理規約(単棟型)67条3項1号参照)、3区画を超える間仕切りを設置して複数者に使用させることの差止め及び間仕切りの撤去を認めました。
ご質問のマンションでも、専有部分の使用を『住宅』に限定する規約があり、その入居者の類型を「単身者」及び「生活共同体」に限定的に解釈する事ができる事情があれば、規約違反でAさんのシェアハウスとしての使用を差止めたり、間仕切りの撤去を請求することができると思います。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(2017年3月号掲載)