管理組合「法人化」の手続きを教えて下さい(2009年3月号掲載)

管理組合を法人化にするメリットは前々回の説明で分かりました。では法人化するためにはどのような手続が必要ですか?

管理組合の法人化は、もともと存在している(法人でない)管理組合を同一性を失うことなく法人格を有している管理組合にすることを意味しています。新たに管理組合を設立するわけではないことから、設立手続自体は簡単なものになっています。行政庁の許可や認可も必要ありません。
また、平成14年の区分所有法改正前においては区分所有者の数が30人以上でなければ法人化することができませんでしたが、平成14年の改正の際にこの要件は撤廃されました。現在では区分所有者が2人以上いれば法人化することができます。

管理組合を法人化するためには、集会の決議が必要です。この集会の決議の際には

(1)法人となる旨

(2)その名称

(3)事務所を定めた上で

(4)区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成が必要です。

なお、名称には必ず「管理組合法人」という文字を用いなければならないことに注意してください。

管理組合法人は、集会の決議で成立するのではなく、登記をすることで成立します。即ち、集会の決議をしただけで登記が完了していなければそれは管理組合法人ではありません。

登記は、設立のための実質的要件が整った日(通常は前述した議決が可決された日)から2週間以内に所在地を管轄する法務局に対して行う必要があります。登記申請は司法書士に頼むのが簡単ですが、必要な添付書類を付けて申請書を作成すれば理事たちで行うこともできます。
添付書類として必ず必要となりかつ重要なのが総会の議事録です。

法務局の登記官は申請書と添付書類を見て、法人化の要件を判断するからです。従って、前述した(1)から(4)の要件を具備していることが明確に分かるように議事録を作成しておく必要があります。特に4分の3の要件に関しては構成員及び議決権の総数、出席構成員及び議決権の数、決議の結果等が明確に分かるように記載します。

添付書類としては「目的及び業務」を証明する資料も必要になりますが、これも議事録に記載することで証明することができます。
法人でない管理組合については法律上は理事や監事を置く必要はありません(標準管理規約に依拠して規約を作成している多くのマンションは実際には理事や監事を置いていますが、法律上の義務ではありません)が、管理組合法人では法律上の義務として理事及び監事を置く必要があることにも注意して下さい。理事及び監事については規約に別段の定めがない場合は集会の決議によって選任されます。集会の決議によって選任する場合は、管理組合を法人化するための決議と同時に理事や監事の選任決議しておくことができますし、その方が便利でしょう。この決議は特別決議ではなく、普通決議で足ります。

回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2009年3月号掲載)