ペット飼育禁止のマンション/最近ペットの苦情が増加(2017年7月号掲載)
Q
私が理事長をしているマンションでは、ペットの飼育を全面禁止する規約があります。しかし、長年に渡り、少なくない居住者がペットを飼育しており、現在に至っています。この規約違反に対し、これまで特に管理組合として対応した形跡がありません。最近、飼育マナーの悪い居住者が増え、苦情が多くなっています。管理組合としては、どのように対応すればよいでしょうか。
A
ペット飼育を全面禁止する規約自体は有効ですから(判例)、居住者はペットを飼育してはいけません。したがって、これに違反をする場合には、原則、飼育の差し止め請求が可能です。
しかし、長年に渡り、管理組合がペットの飼育を野放しにしてきた事情がある場合に、にわかに飼育禁止を求めたとしても、強く抵抗される可能性があり、裁判でも、そのような事情が考慮されて、権利の濫用などの理由で、差し止め請求が認められない可能性も否定できません。もっとも、規約違反の状態で、飼い主のマナー違反により実害が出ているわけですから、管理組合としては、何らかの対策をとらなければなりません。
こうした場合、管理組合は、現状を踏まえた対応をすべきと思います。
まず、規約を改正して、飼育全面禁止を改めることが考えられます。規約で飼育を認めた上で、飼育可能であるペットの種類や飼育マナー等について細則を定めます。細則を守らない飼い主に対しては、放置せず、指導を徹底して、それでも違反を繰り返す飼い主に対しては、飼育の差し止め請求をすべきです。
また、現在飼育しているペット一代限りで飼育を認めるという方策も考えられます。例えば、理事会の承認があれば飼育可としている規約がある場合には、現在ペットを飼っている世帯を調査し、他の居住者に迷惑がかからぬよう一定のルールを遵守する誓約書をとった上で、その一代限りで飼育を理事会が承認するという方策が考えられます。飼育のルールについては、細則を総会決議で定めて、組合員の総意をとっておくのが良いと思います。このような手当をしたにもかかわらず、飼育ルールの違反を続ける飼い主に対しては、差し止め請求が認められるものと思います。
規約が例外的な飼育を認めていない場合には、規約を改正して対応するのが本来ですが、私見としては、規約改正なくとも、現在飼育している一代限りで飼育を認め、その飼育ルールを定める旨の総会決議があれば、規約改正までは不要ではないかと考えています。理由は、このような総会決議は、あくまでペット飼育全面禁止の目的を達成するための過渡的、暫定的措置といえ、規約の趣旨には実質的に反しないと言えるからです。
回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・内藤 太郎
(2017年7月号掲載)