Q&A 新型コロナ禍の影響による管理費等滞納の対応策は?(2020年7月号掲載)

 

 新型コロナ渦の影響で、今後管理費等の滞納案件が増えるおそれがあります。どのように対応すればよいでしょうか。

 非常に難しい問題です。新型コロナ渦の影響で、収入が激減し、管理費等の滞納案件が増えるおそれがあります。世界的な非常事態ですので、従来どおりの督促を控える管理組合もあるかと思います。しかし、管理組合の運営、建物の維持は、管理費等で賄っていますので、滞納を放置してよいわけではありません。かといって、やみくもに督促をかけるだけでは解決に至らない可能性もあり、実に悩ましい問題です。

 滞納問題は、そもそも、管理組合と組合員の内部的な問題で、本来的には敵対関係にはないはず、というのが私のスタンスです。督促をする際も、一定程度、組合員の実情を踏まえた上で対応していくのが望ましいと考えています。滞納者の経済状況を踏まえた上での滞納解決策を、管理組合と滞納者で協議していくことが重要と思います。その際、滞納者が、借金を抱えていて、その返済に手一杯で、管理費等の支払いが滞るというケースも少なからずあるかと思います。その場合は、借金問題の解決が、滞納解消につながることがありますので、滞納者が借金問題を弁護士に相談、依頼し、いわゆる「債務整理」をすることも有益である場合があります。

 典型的な債務整理の方法はいくつかあるのですが、その一つに、弁護士を代理人に立てて、金融業者と個別に返済方法を交渉する「任意整理」という方法があります。あくまで個別の交渉ですので、必ず返すべき借金が減るというわけではありませんが、金融業者がかつて違法な高金利を取っていた場合などは、いわゆる「過払い金」の返還を求めることができるので、大幅に借金が減ることもあり得ますし、またそうでなくても、将来的な利息をカットして、分割払いの和解をすることも期待できます。

 別の方法として、小規模個人再生手続を裁判所に申し立てることも考えられます。この手続きを利用すると、例えば、住宅ローンを返済しながら、他の借金を一定額カットして(100万円未満に借金を減らすことはできません)原則3年間の分割払いで支払いを終えることができます。一定の上限額はありますが、住宅ローンとは別に、数百万円以上の多額の借金を負担している場合などには、有益な方法です。ただし、管理費当の滞納が残ったままだと、住宅ローンを返済しながら住宅を残すことができないなど、様々な制約がありますので、この手続きが望ましいか否かは、慎重に判断する必要があります。

 やむを得ない場合は、破産という選択肢も考えられます。破産は、生活に必要な一定の財産を残して財産を換価配当する手続きですが、免責により借金の返済を免れることが多く、滞納者の経済的な再生のために有用な手続きでもあります。この場合、滞納管理費も免責され、以後滞納者へ請求できなくなることが多いですが、居室の新所有権への請求が可能となります。

 このように、管理組合としては、滞納者に弁護士へ相談に行ってもらうことを促すことも、滞納解決につながる場合があります。

法律相談会専門相談員 弁護士 内藤太郎

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年7月号掲載)