法律Q&A 店舗組合員から喫煙室設置の希望 空き部屋を喫煙室に変更できるか?(2022年9月号掲載)
Q
私たちのマンションは1階と2階に店舗があり、3階以上が住宅となっている複合型のマンションです。店舗部分の通路の端でタバコを吸う人がいて、吸い殻が落ちています。店舗部分で飲食店を営業している組合員からも喫煙室を設けて欲しいとの要望があります。店舗部分に一時的に荷物置き場として使用している空き部屋(共用部分)があり、そこを喫煙室にしたいと考えていますが、この場合共用部分の変更にあたるので特別決議が必要となるのでしょうか。
A
区分所有法17条1項は「共用部分の変更」は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別決議)が必要と規定しています。
この17条1項は平成14年の区分所有法改正の際に「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」と修正されたことから、共用部分の変更であっても形状又は効用の著しい変更に該当しなければ普通決議で行えることになります。
形状の変更とは外観や構造等を変更することであり、効用の変更とは機能や用途を変更することです。立法担当者による解説書(一問一答改正マンション法~平成14年区分所有法改正の解説~商事法務)には「形状の著しい変更」に当たる例として階段室を改造してエレベーター室にする場合、「効用の著しい変更」に当たる例として集会室を廃止して賃貸店舗に転用する場合があげられています。
荷物置き場として利用している空き部屋を喫煙室に変更することは用途の変更になるので効用の変更に該当します。
では、「著しい変更」に該当するでしょうか。先に述べたように、立法担当者は「効用の著しい変更」に該当する例として、集会室を廃止して賃貸店舗に転用する場合をあげています。集会室を賃貸店舗に転用されると、本来であれば組合員は誰でも使用できたはずの集会室が使えなくなりますので、変更の程度は著しいと判断されます。これに対して、本件では一時的な荷物置き場として利用されていた空き部屋(組合員が自由に使えたわけでもなく有効活用もされていない)を喫煙室(組合員以外にも店舗利用者も使える)に変更することは著しい変更には当たらないと考えられます。
したがって、本件では特別決議までは不要であり、普通決議で足ります。
もっとも、喫煙室に変更する際にして、壁に穴を開けて排気ダクト装置のようなものを設置する場合は「形状の著しい変更」に該当する可能性があります。
法律相談会専門相談員 弁護士 石川貴康
集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年9月号掲載