法律Q&A 上階から水漏れ どうすれば?(2023年3月号掲載)
Q
私は、2階の201号室に住んでいますが、天井から水漏れがあります。真上の3階の301号室にその旨を伝えて改善を求めたのですが、一向に水漏れが止まりません。管理組合にも相談したのですが、個人間の問題であるからと、取り合ってもらえません。どうすればよいでしょうか。
A
まず、漏水の原因がどこにあるのかを突き止める必要があります。共用部分に原因があれば管理組合が修繕等の責任を負い、上階301号室の専有部分に原因があればこの居室の区分所有者が責任を負います。とはいえ、漏水の原因がどこにあるのかを住民の方々だけで判別するのは難しいはずです。
原因が不明である場合は、共用部分に原因があると推定されるのが法律です(区分所有法9条)。共用部分の管理は、管理組合の責任と負担においてなされますから(標準管理規約単棟型21条1項。通常、いずれの管理規約においても同様の規定があります。)、まずは、管理組合の費用負担で漏水の原因を調査すべきです。専門業者による、上階301号等への立ち入り検査を実施すべきです。漏水の原因が共用部分にあると判明した場合は、管理組合の責任と負担において補修工事等の対応を求めるべきです。
他方、漏水の原因が上階301号室の専有部分にあると判明した場合は(例えば、上階301号室の浴室のシーリング不良など。)、あらためてその補修工事を上階301号室の区分所有者へ求めることになります。当然、補修工事の費用や、階下201号室の損害(壁紙の汚損や家財道具の破損など。)の賠償は、上階301号室の区分所有者が負担することになります。もっとも、こうした状況に備え、保険に加入なさっている方も多いかと思いますので、ご自身が加入されている保険の内容を確認してください。ご自身の居室の損害を保証する保険とは別に、他の居室への損害をカバーする「個人賠償責任保険」という保険もあります。この個人賠償責任保険は、火災保険や傷害保険、自動車保険などの特約で付いている場合もありますから、思わぬ分野の保険で対応できることもあります。ですので、加入されているあらゆる保険内容を確認することをお勧めします。
ところで、上階301号室に原因があり、保険での対応が難しく、上階301号室の区分所有者が対応をしてくれない場合などは、法的手段をとるしかありません。最終的には訴訟で決着をつけることになりますが、漏水の解決は、通常、緊急性が求められますので、より迅速な手続きである「仮処分」という手続きを利用すべきです。上階301号室の区分所有者が、そもそも立ち入り検査自体を拒む場合や、補修工事等を行わない場合には、この仮処分を利用して解決を図ります。仮処分の詳細については別稿に譲りますが、簡単に申し上げますと、訴訟の敗訴に備えて原告が担保金を法務局に供託した上で、訴訟よりも簡便な主張や疎明で短期間のうちに結論を出す手続きが仮処分です。訴訟は、仮処分と同時並行あるいは仮処分後に行うことになります。仮処分の手続き中や、そもそも仮処分を行う旨の予告を相手方にした時点で、和解がなされることも多々あります。
法律相談会専門相談員 弁護士 内藤 太郎
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年3月号掲載)