法律Q&A 共用部分の利用を理事会に付託する議案をどのように考えるか(2024年9月号掲載)

 私たちのマンションには、建物内の共用部分として、倉庫、大小の会議室、コインランドリー、自動販売機設置スペース、管理事務室等があります。これらが有効に活用されてないことから、今般の総会決議で、これらの共用部分の利用について理事会に付託するという議案が出されています。利用行為の中には賃貸も含まれるとされており、その場合の賃料は組合員に帰属するという注記もなされています。これに対して、元役員のAさんから共用部分の利用方法を理事会に付託することはできない。可決されても決議は無効であると反対意見が出されています。どのように考えたら良いでしょうか。

 

 本件と同様の問題が争われたのが東京地方裁判所令和5年7月25日判決です(この裁判では他にも無効と判断された議案がありますが、ここでは共用部分の管理に関する決議に限定して説明します。)。

 区分所有法18条は、共用部分の変更や保存行為に当たらない狭義の管理に関する事項(本件の付託行為もこれに含まれる)については、例外として規約で別段の定めをする場合を除いて、集会の決議で決するものと規定しています。

 判決はこの規定は、共用部分の管理に関する事項の重要性に鑑みて、法律が個別的に集会の決議事項にしていると指摘した上で、本件管理組合法人で共用部分の使用については例外的に認められている規約に規定がないのであるから、総会の決議が必要となるとしました。

 その上で、本件の総会決議の内容は、共用部分の利用について、有償使用の場合を含めて理事会に付託する内容であるが、それは、個別の総会決議を要さずに、包括的に理事会に付託するものであり、実質的には、規約の定め又は使用細則等によることなく、共用部分の管理に関する事項を総会決議事項ではないということにすることを意味するといえるが、そのような決議内容は、共用部分の管理に関する事項の重要性に鑑みてこれを集会の決議事項とした法の趣旨を没却するものであり、法18条や規約(*)に違反するとしました。

 その上で、集会の決議に瑕疵があれば、原則として無効となると解すべきところ、集会決議が無効となれば、管理組合のみならず、第三者に対する関係においても影響を及ぼすことになるから、決議の瑕疵が重大でなく、かつ、その瑕疵があったことが決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、当該瑕疵によって決議は無効とならないと解すべきである。としつつも、本件決議は、その内容が法や規約に違反するものであるから、この一事をもってその瑕疵が重大といえるとして、総会決議を無効としました。

 標準管理規約では理事会の決議事項として「総会から付託された事項」を挙げており、本件管理組合法人の規約にも同様の規定があり、被告の管理組合法人はこの規定を根拠に理事会への付託が許されると反論しましたが、判決では規約によって別段の定めを置くのでなければ、理事会へ付託することはできないと判示しています。

 本件でも規約に規定が無い限りは、(規約を改正して規定を置くか)総会の個別の決議が必要となるので、理事会への付託はできないと考えられます。

(*)本件管理組合法人の規約では「管理組合は、総会の決議を経て、敷地及び共用部分等(屋外駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部について、特定の区分所有者又は第三者に有償で特定の用途に使用させることができる。」と定められていました。

法律相談会専門相談員 弁護士 石川 貴康

(集合住宅管理新聞「アメニティ」 2024年9月号掲載)