壁にヒビ…、欠陥の場合の請求は? (2006年1月号掲載)

Q.

最近A(元)建築士の構造計算書偽造がマスコミで大きく取り上げられています。あそこまでひどくはありませんが私たちのマンションも壁にヒビが入ったりしており、欠陥マンションではないかと心配しています。欠陥があった場合どのような請求が出来るのでしょうか?

 

A.

一般に欠陥と言われるものは法律用語では「瑕疵」と言います。「瑕疵」とは一言で言えば「物質的な不完全さ」です。瑕疵があるか否かは当該目的物が通常備えるべき品質・性能を有しているか否かによって判断することになりますが、当事者がどのような品質・性能を予定していたかも判断要素となります。建築基準法違反のマンションはそれだけで「瑕疵」があると判断されます。建築基準法は建物の安全性の最低基準を定めているものだからです。

但し、建築基準法に違反していないから瑕疵がないとは言い切れません。

例えば、震度7以上の大地震が発生しても建物には全く支障が生じませんと耐震性を売りにして販売していたのに、実際に震度7の地震が来た時、倒壊の危険はなくても建物の構造にゆがみが生じて補修が必要になるとすれば、たとえ建築基準法に違反していなくても、やはり「瑕疵」ある建物になります。この場合買主は震度7程度では補修の必要性すら生じない程度に強固な耐震性があることを予定して購入しているからです。簡単に言ってしまうとカタログやパンフレットで性能を保証した以上は、それに満たない場合は原則として「瑕疵」になると言うことです。

では、マンションに瑕疵があった場合どのような請求が出来るのでしょうか?

民法570条では売買の目的物に瑕疵あった場合、契約の目的が達成できない場合は契約の解除が出来ると定め、それ以外の場合は損害賠償が出来ると規定しています。しかし、民法は請負契約については補修(条文上は修補と言葉を使っています)を定めていますが売買契約については明文上は補修の規定を置いていません。

ところで、平成11年に住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」と言います)が制定されています。品確法は新築住宅(但し完成から1年を経過したものは除かれます。)について適用されるものですが、マンションも新築であれば当然対象となります。この品確法では、建物の基本構造部分(構造耐力上主要部分又は雨水の浸入を防止する部分)については瑕疵の補修請求権が認められています。そして、この補修請求権は引渡を受けた時から10年間とされています。また、品確法では買主は補修に代えて損害賠償請求することも認められており、補修とともに損害賠償請求をすることも認めています。

なお、通常マンションの売買では契約に附随してアフターサービスの基準が定められておりますので、これに基づいて補修を求めることも出来ます。

以上まとめると、買主である組合員としては補修請求をすることも出来るし、損害賠償請求をすることも出来るし、補修だけではまかなえない場合は補修請求と損害賠償請求の両方を行うことも出来ることになります。

回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川貴康
(2006年1月号掲載)