建替えか修繕か検討する際に委員会を設置した方がよいか? その場合の費用の支出は? (2008年5月号掲載)
Q.1
管理組合として建替えか修繕かを検討する際に管理組合とは別途に委員会等を設置した方が良いのでしょうか?
A.1
これらを検討する際に委員会を設置しなければならない法律上の義務はありません。しかし、建替えか修繕かを検討することは専門的な知識が要求されます。理事会に多数の理事がいて、専門的な議論ができるのであれば、理事会内部で検討することも考えられますが、一般的には仕事をもちながらボランティア的に就任している人が大半ですから、理事会内部で検討するのは難しいと思われます。
他方で、理事ではない組合員の中に建築に対する知識を有していたり、既に定年しており、比較的時間に余裕のある方もいます。そのような知識のある方や熱意のある方の力を借りる点からも専門的な委員会を設置して幅広くメンバーを募ることができる形が望ましいでしょう。
なお、必要に応じて外部の専門家(1級建築士、コンサルタント等)をオブザーバーとして参加させることも可能です。
Q.2
仮に設置するとしたら、管理組合の諮問機関として設置することが良いのでしょうか?
A.2
最終的に修繕で行くのか、建替えで行くのかを決定するのは、組合員全員、即ち、総会で決議すべき事になります。
しかし、その方向性を決めて、総会に議案書を提出するのは理事会の任務です。
したがって、理事会の諮問機関として設置することが望ましいといえます。
諮問機関の設置方法ですが、組織の活動目的、権限、メンバー構成や任期、活動費用の拠出などに関する事項を記載した、組織の「設置・運営細則(案)」を作成した上で、総会で設置の承認を得ることになります。この場合の決議は普通決議で足ります。
Q.3
組織の運営にかかわる費用の支出は、管理組合費から出すのでしょうか? それとも修繕積立金から出すのでしょうか?
A.3
集会の決議があれば、修繕積立金を取り崩して、建替えのためのコンサルタント費用や設計費用に充てることが許されると判断した裁判例もあります。
しかし、標準管理規約には修繕積立金を取り崩すことができる場合が列挙されておりますが、修繕か建替えかを検討するために要する費用は規定されていません。
したがって、当該マンションの規約が標準管理規約と同じように規定されていれば、取り崩しの前提として、規約変更の手続が必要になってしまいます。
これは現実的でないので、一般的には管理組合費から支出することになると思います。
なお、管理組合費から支出する場合でも、予算案を作成して、総会で議決(普通決議)を得ておく必要があります。
回答者:法律相談会
専門相談員
弁護士・石川貴康
(2008年5月号掲載)