手すり・バリアフリー・エレベーター等高齢化対策工事を実施する際にどのような手続きをてれば良いのか? (2008年9月号掲載)
Q
私達のマンションも高齢化が進んできました。階段に手すりを設けたり、玄関部分にスロープを設置するなどのバリアフリー化の工事をしたいと考えています。また、エレベーターの設置の要望も出ています。これらの工事を行う場合どのような手続をとれば良いのでしょうか。
A
階段に手すりを設置したり、玄関部分にスロープを設置すること、エレベーターを設置することはいずれも共用部分の変更に該当します。
区分所有法17条1項は「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは除く)は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する」と規定しています。つまり、形状や効用の著しい変更を伴わないものは通常の過半数による普通決議で決められることになり、形状や効用の著しい変更を伴う場合は4分の3以上の特別決議が必要になります。
では、4分の3以上の特別決議が必要となる「形状又は効用の著しい変更」に該当するか否かはどのように判断するのでしょうか。
共用部分の形状の変更とは、その外観、構造等を変更することを言います。
また、共用部分の効用の変更とは、その機能や用途を変更することを言います。そして、かかる共用部分の変更が「形状又は効用の著しい変更」に該当するか否かは、基本的な構造部分に手を加えているかどうかなど変更を加える場所、変更の範囲、変更の態様及び変更の程度を総合して判断されます。
このような観点から考えると、階段に手すりを設けたり、玄関部分にスロープを設置することは、建物の基本的な構造部分に手を加えるものではありませんので、「著しい変更」には該当しないと考えられます。従って、集会(総会)において過半数による普通決議で実施できます。
これに対して、エレベーターの設置は、階段室部分を改造したり、建物の外壁に取り付けを行うなど建物の基本的な構造部分に手を加える必要があるので、「著しい変更」に該当すると考えられます。従って、集会(総会)において区分所有者及び議決権の4分の3以上の特別決議を経た上で、工事を実施する必要があります。
なお、17条2項では「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の区分所有者の承諾を得なければならない」と規定しています。特別の影響にあたるか否かは、変更行為の必要性・有用性と区分所有者の不利益とを比較衡量して、区分所有者にとって受忍すべき範囲を超える不利益を言います。
本件について言えば、バリアフリー化のための工事を実施することで、受忍限度を超える不利益を受けることはあまり想定されないと思います。
回答者:法律相談会
専門相談員 弁護士・石川貴康
(2008年9月号掲載)