マンション再生の新たな施策/「建物敷地売却制度」を新設/国土交通省

 東日本大震災以降、旧耐震基準(1981年以前)で建てられた建物の耐震化が急がれている。そのため、政府は昨年耐震改修促進法を改正し、一部建物の耐震診断の義務化等、建物の耐震化に注力している。そんな中、今年度から耐震性不足のマンション再生の新しい制度「敷地売却制度」が導入されようとしている。今月は既に国交省から示された同制度の概要についてお伝えする。

分譲マンションの現状

 国土交通省によれば、2012年度末現在、分譲マンションのストック数は約590万戸、そのうち、老朽化の目安とされる築30年を超えるマンションは約140万戸、旧耐震基準で建てられたマンションは約106万戸となっている。
 一方、マンション建替えの実績は、累計で183件、約14000戸(2013年4月時点)と、建替えはあまり進んでいない。
 巨大地震発生の恐れがある中で、耐震性不足マンションの建替え等が進んでいないことから、生命・身体の保護の観点から、耐震性不足マンション対策が喫緊の課題となっていた。

「建物敷地売却制度」新設

 耐震性不足マンションの再生を進めるため、国土交通省は「マンション建替え円滑化法」を改正し、「建物敷地売却制度」を新設。
 同制度では、特定行政庁(都道府県知事及び市長)により、耐震性不足と認定されたマンションは、区分所有者の5分の4以上の賛成があれば、建物を除却し、敷地の売却が可能になる。

 今までは、建物を除却し、敷地を売却するには、民法の規定により権利者全員の同意が必要だったが、同改正法で、同意の要件を引き下げた(従来の制度との比較は別表1参照)。
 制度の流れは表2に示した通り。
 特定行政庁に申請を行い、「要除却認定」を受けたマンションは、敷地売却決議を行い、5分の4以上の同意があれば、決議が成立する。
 決議後、「マンション敷地売却組合」を設立し、組合は分配金取得計画を作成。権利消滅期日までに組合は各区分所有者に分配金を配分し、所有権を組合に集約する。また権利消滅期日までに借家権や抵当権も消滅し、組合は、買受人(デベロッパー等)にマンションと敷地の権利を売却する。

建替えは容積率緩和

 また、耐震性不足のマンションを建替える場合、新たなマンションの敷地内に公開空地を設けたり、高齢者向け施設や保育施設等を整備するなど、市街地環境の整備や改善に資するものは、特定行政庁の許可により容積率が緩和される。

相談体制も整備

 建替え等の専門家による相談体制も整備される。これは敷地売却等を前提とせず、老朽化マンションの管理適正化・再生推進に向けた環境整備を図ることを目的としている。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2014年4月号掲載)