24.リビルディング・ムーヴメント④
マンション建替え実例の初期段階にあっては、等価交換でしかも任意の建替えが主流であることは既に述べた。もう一つの特徴は下段図表にあるように、第一種市街地再開発事業としての建替えが集中していたことである。
同事業は、権利変換方式を採用し、施行地区内の土地や建物に関する権利を収用等によらず、一連の手続きにより、敷地内建築物や敷地の権利に返還するというもので、施行者、施行区域が限定される。
例えば、ある駅前の密集市街地を含んだ再開発を行おうとするとき、従来の土地区画整理事業では前進しづらい場面がいくつも登場する。こういった場合、権利変換を主力とする第一種市街地再開発事業を採用することで、駅前に広場を設け付随する道路を整備する等行うことができる。
併せてビル等を建築し、あらかじめ権利床・保留床を設定しておくことで、それを売却し、事業費等に還元できるといったシステムだ。
この方式を採用し、最も早く建替えたのは、同潤会・中之郷アパートメント(墨田区)で、1990年(平2)である。首都圏では、8番目あるいは9番目の実例となる。
少し具体的に見てみると、もともとは、3階建て6棟、102戸のアパートメントで大正15年築。標準的な住戸は専有床面積約30㎡だったとしている。これが、14階建て165戸の高層マンションに生まれ変わり、専有床面積を2倍の61㎡とした。
第一種市街地再開発事業の担い手は、旧同潤会アパートメントを含んだ地区を束ねる再開発組合ということになる。
94年(平6)以降、旧同潤会系住宅団地の建替えは、第一種市街地再開発事業を主とする手法が目立つ展開となっていた。
第一種市街地再開発事業ほか実績(1994~2004年までの20例)PDF
①同潤会住利・東町アパート、③同潤会柳島アパート、⑩同潤会代官山アパート、⑬同潤会鴬谷アパート、⑮⑯同潤会清砂通りアパートがそれである。なお、賃貸住宅ではあるけれどもわが国最古のアパートメントとされる旧東京市営住宅の古石場住宅団地も、この手法で再開発された。
さて、これが2003年以降になってくると「法定建替え」といった手法に代わってくることになる。では法定建替えとは一体、どんな建替えであろうか。83年(昭58)にわが国の区分所有法は、世界に先駆けて多数決による建替えを認めた。つまり、建物の維持管理の延長線上に、一定の条件をクリア―とすれば、究極の管理として建替えも可能としたのである。
法定建替えとは、このことを意味する(法62条)。83年に、このような考え方が導入されたものの、結局のところ実現に至るのは、2000年以降のことである。首都圏では、⑰同潤会江戸川アパートが最初で2003年(平15)になって漸く、その実現に至った。(つづく)
明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員
竹田 智志
2020年4月号掲載