不適切コンサルタントに騙されないための手立てとは  第18・19回プロジェクトアシアス研修セミナーより:2017年10月号掲載

 マンション改修の専門家等が立ち上げた「プロジェクトアシアス」(本部:東京都新宿区、鈴木哲夫会長)は、6月30日、8月25日の2回に亘り、「マンションを取り巻く悪徳コンサルタントの実態に迫る」と題するセミナーを行った。大規模修繕工事では、設計コンサルタントが建物調査や工事の仕様書等を作成し、施工にあたっては施工会社の監理を行う「設計監理方式」で行われることが多い。しかし、今年1月、国交省が「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の相談窓口の周知について」をマンション関係団体等に通知して以来、大規模修繕工事で不適切コンサルタントが施工会社等からリベートや労務の提供を受ける実態が、一般紙でも報道されるようになってきた。

不適切コンサルタントの実態

 セミナー講師を務めた鈴木会長は、今年1月に国交省が出した通知や一般紙の報道等を引用しながら、不適切コンサルの実態を紹介。そのすべては紹介できないため、別表に抜粋した。

 こうして不適切コンサルの一見安く見えるコンサル費用には、工事請負金額の一部やメーカー材料費の一部がリベートとして積み重なる。そして健全な価格よりも割高となった価格を、何も知らない管理組合が負担するという構造が出来ている。

なぜ不適切コンサルを選んでしまうのか

 不適切コンサルが選ばれる背景には、発注者の習性が関係していると指摘。そのいくつかを紹介すると、

■価格が安いほうを優先する

 コンサルタントを募集する際、複数のコンサルから見積をとるが、管理組合は安さに飛びつく。健全なコンサルはリベートをとらないため、見積価格を比較した場合、健全なコンサルが高く見えてしまう。また、見積価格が高いコンサルを選定した場合、他の区分所有者からその理由を問われるため、説明の必要の少ない安価なコンサルを選んでしまう。

■「会社の規模が大きく実績も多いほうが安心」と考え、コンサル応募が過剰な条件になっている

 その結果、会社の規模が大きく、実績も多いコンサルが応募に残る。しかし、大手コンサルは人材が多い分、物件を確保する必要があり、経費も掛かるので、本来なら安いコンサル費用にはならない。安くするためには、手を抜くか、別の費用補填が無ければ経営は無理。

■ほとんどが性善説に立ち、無関心

 「まさかそんなひどい事はしないだろう」という性善説に立つ人が多いことを利用される。マンション住人の高齢化が進むに従い、どうしても管理組合運営に無関心な人が増え、管理会社等に全てお任せするようになり、そこを付け込まれる。

適正な設計コンサルタントを探すには

 では、管理組合は何に注意して設計コンサルを選べばいいのか。セミナーで紹介された視点をいくつか紹介する。

●コンサル会社の代表者、営業担当者の職歴を確認

 鈴木会長によれば、なかには健全な転身組もいるものの、不適切コンサルには施工会社等の転身組が多いことから、代表者の職務経歴書の提出を求めるとともに、コンサル会社内の技術者や営業担当者の職務を記載したリストの提示も求める。あるいはコンサル会社選定のヒアリングで同様のことを確認する。

●セカンドオピニオンの活用

 心配な設計コンサルタントを選定した場合、大規模修繕工事に詳しいコンサルタントをセカンドオピニオンとして活用する。セカンドオピニオンが、設計コンサルの業務内容や施工会社選定など業務遂行状況のチェックや不正がないかを監査することで、不正の抑止効果が期待されるとともに、適正な業務遂行が促される。

●管理組合相互に連携し、情報を収集する

 コンサルの評判を、他の管理組合関係者や信頼できる支援団体などから聴取するなど、不適切コンサルタントの情報を収集し、管理組合間の連携を深め、情報を蓄積することで、不適切コンサルタントをあぶりだす。
といった自衛策が紹介された。

(2017年10月号掲載)