4月からスタート 既存住宅の流通促進に向けた新制度:2018年2月号掲載
2013年の総務省「住宅・土地統計調査」で、全国の空き家数が820万戸(総住宅数の13・5%)と発表されて以来、注目を集める既存住宅の流通活性化。最近では新築マンションの価格高騰が続いていることから、割安な既存住宅を購入し、自分好みに改修して住む人も増えつつある。しかし、住宅流通に占める既存住宅の割合は約15%程度に留まっており、6~9割の欧米諸国と比べ低い水準のままだ。そこで、既存住宅の流通活性化のため、国は4月から新たな制度を開始するほか、民間団体でも新たな制度を開始する。
「安心R住宅」の創設
国が4月から始めるのが、「安心R住宅」だ。
既存住宅は新築に比べて割安で、実際の住宅を見て比較検討できるほか、リフォームして、自分のニーズで室内を改修できる良さがある。その一方、「品質が不安、不具合があるかもしれない」「古い、汚い」「選ぶための情報が少なく、わからない」というマイナスイメージが消費者にはあり、これが既存住宅の流通を阻害する要因となっている。
これらの要因を払拭し、「住みたい」「買いたい」と思うような既存住宅を消費者が選択できるようにするため、国は、別表の要件を満たす住宅を「安心R住宅」と定めた。また、「安心R住宅」の広告には、別図の標章を定め、これの使用を認めることとした。
標章使用の条件
国は、標章の使用を希望する事業者団体を審査・登録し、標章の使用について許諾する。
事業者団体は、リフォームの基準及び事業者が守るべきルールを設定し、構成員である事業者の指導・監督を行う。既存住宅の売主・仲介を行う事業者は、要件に適合した住宅について、団体の基準やルールに則って、広告に標章を使用することができようになる。
標章の使用は、今年4月から始まる。
「優良事業者認定制度」の創設
一方、全国の管洗浄業事業者で構成される、一般社団法人全国管洗浄協会(東京都港区、上之原靖理事長)は、オフィスビル、マンション等の建築物の維持管理に大きく寄与する排水設備保全と、管洗浄業者のサービス品質向上をめざす「優良事業者認定制度」を創設した。
同協会では、4月に認定事業者の発表を行う。
制度導入の経緯
最近、中古マンション等をリノベーションして住むことに大きな関心が寄せられるとともに、マンション管理組合や管理会社の建物の維持管理状況にも大きな関心が寄せられ、「水の管理」にも、関心が高まっている。こうした中、同協会には、マンション管理組合や管理会社等からの問合せも増えているということだ。
そこで同協会では、会員企業に制度への参加を呼びかけるとともに、マンション管理組合や管理会社等に、建築物の維持管理の必要性や排水管洗浄事業が持つ社会的な価値(管洗浄による環境衛生の維持)への認知を高めて行きたいとしている。
日常の管理が問われる既存住宅流通活性化
今回紹介した制度は、いずれも事業者向けの制度だが、背景には、既存住宅ストックを、限られた資金や資源で有効に活用し、長年、循環させようという流れがある。そのため日常の建物管理が問われている。特にマンション共用部分の管理は、管理組合の専管事項だ。
これにより、既存住宅の流通活性化は、その事業者だけではなく、管理組合の力量も問われることになる。
(2018年2月号掲載)