Aさんが個人で共用部分に自販機を設置(2017年1月号掲載)
Q
私達のマンションのエントランスに自動販売機が置かれています。ところが、最近この自動販売機は組合員のAさんが勝手に自販機の会社と契約して置いたものだと判明しました。それを知った組合員のBさんが個人でAさんを訴えると言っています。自動販売機が置かれていたのは共用部分ですから、管理組合が対応すべきであると思いますが、どうしたら良いでしょうか。
A
自販機が置かれているエントランスは共用部分です。共用部分は区分所有者全員の共有に属するものですから、Aさんが無断でこれを使うことはできません。Aさんが自販機の会社から受け取っていたお金(賃料)は民法上の不当利得に該当します。例えば、本件マンションが30戸であり、共用部分の持分割合が平等だとすればBさんは30分の1の持分があるので、自分が持っている持分割合に応じて、不当利得返還請求権を行使できるのが原則です。
しかし、各区分所有者が持分割合に応じて個別に行使することになるとその処理が煩雑になります。そこで、管理組合が主体となって不当利得返還請求権を行使することが妥当であると考えます。
まず、規約に不当利得返還請求について管理組合が請求を行うことが定められている場合は、不当利息返還請求権の行使は管理組合という団体のみが行使して、個々の組合員は行使できないことになります。
そのような規約が無い場合でも、集会(総会)でAさんに対する不当利得返還請求権は管理組合として行使することを決議することが考えられます。
もっとも、単に管理組合としてAさんに対して不当利得返還請求ができる旨を決議するだけではBさんを含めた他の区分所有者が管理組合とは別に返還請求をすることができることになりかねません。
そこで、かかる決議を行う場合は、不当利得返還請求権は管理組合のみが行う旨の決議をしておくべきです。
そのような決議を行えば、Bさんが管理組合とは別に不当利得返還請求をすることはできなくなります。
なお、本件と同様の点が問題(区分所有者の1人が携帯電話会社との間で共用部分である塔屋や外壁等を賃貸して賃料を受領していた)となった事案に関する最高裁判所の判決(平成27年9月18日・判例タイムズ1418号・92頁)がありますが、そこでは「区分所有者の団体は、区分所有者の団体のみが不当利得返還請求権を行使することができる旨を集会で決議し、又は規約で定めることができるものと解される。そして、上記の集会の決議又は規約の定めがある場合には、各区分所有者は、上記請求権(不当利得返還請求権)を行使することができない」と判断しています。
回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(2017年1月号掲載)