共用部分が100%補修される法改正を マンション共用部分の100%補修の実現を求める院内集会開催
現在進行中の区分所有法改正作業。管理組合の意思決定を、行いやすくすることが改正の中心になっているが、もう一つ注目すべき改正点がある。それがマンションの瑕疵補修である。
昨年12月12日、欠陥住宅被害全国連絡協議会は、衆議院第二議員会館多目的会議室で「マンション共用部分の100%補修の実現を求める院内集会」を開催した。
マンションを買った後、あるいは改修工事後、建物の共用部分に工事に起因する瑕疵があった場合、管理者は区分所有者を代理して、規約又は集会の決議により、販売会社や施工会社に対して損害賠償請求を行うのが一般的である。
これは、各区分所有者が権利行使しても、その額が少額にとどまり、かつ、受領した賠償金は、共用部分等の損害の回復に使われることから、管理者が各区分所有者を代理して一元的に請求・受領したほうが、建物の適正な管理に資すると考えられるからである。
その趣旨で2002年、区分所有法26条2項及び4項の改正が行われた。
訴訟の当事者ではないとする判決
しかし、2016年、東京地裁は、区分所有権の転売が行われている場合、管理者は旧区分所有者を代理できないとし、訴えを却下した。
その理油は以下の通り。
①損害賠償請求権は各区分所有者に属する。
②区分所有権の転売があっても、損害賠償請求権は元の所有者のもので、新しく区分所有者になる人は、元の所有者から債権譲渡を受けない限り、損害賠償請求権は無い。
③債権譲渡を受けない区分所有者がいる場合、管理者は、区分所有者全員の代理を受けたと言えないから、訴訟の当事者にはなれない。
通常、分譲マンションにおいて転売は普通のことであり、この理由では、転売があるマンションでは、瑕疵が見つかっても訴訟を提起できない。
今回の区分所有法改正でも、この判決は問題視され、法務省の法制審議会は昨年2月「区分所有法制の見直しに関する要綱」を示し、この問題の改正案を第1の6に示した(別表参照)。
しかし、この改正案にも問題があるとして今回の集会に至っている。
100%補修できない要綱案
集会で示された要綱案への懸念として、そもそも、旧区分所有者から債権譲渡を受けられるかという問題がでた。
瑕疵紛争事件を取り扱った弁護士の事例報告によれば、欠陥工事から法手続申立までの間に、当該紛争マンション全654戸のうち約4分の1に区分所有者の変動があった。これら全部から債権譲渡を受けることは現実的では無い。同一住戸で複数回転売が行われれば、その難易度は更に上がる。
また表の③及び④で、旧区分所有者に通知をし、別段の意思(例・賠償金をそのまま渡せ)を示された場合、代理制度の建前上、要求を拒むことはできないとされ、そうなれば費用不足から補修工事ができない。
100%補修できる法改正を
これらの問題を受け、同集会では、区分所有権が譲渡された場合には、共用部分の損害賠償請求権は、当然譲受人に移転し、一元的な請求権行使が可能な、100%補修できる法改正を求めた。
集合住宅管理新聞「アメニティ」2025年1月号掲載