給排水管の改修に備えるための基礎知識2

方法2:図面を確認する

 長期修繕計画の記載のみに頼らず、これを機会に是非一度、設計図書を見ていただくことをお勧めします。

 保管されている図面の中からできるだけ「竣工図」と記載されている図面を探し、その中に「給排水衛生設備図」というものがあります。

 冊子(図面)の前の方に「特記仕様書」というものが出てくると思います。図4は1986年に竣工した某マンションの特記仕様書です。親切に排水管の記載は共用部分と専有部分に分かれて記載されています。この事例の場合ですと、共用部分はいずれ改修を計画しなければならない材料(排水用鋳鉄管)が使われておりますが、専有部分は腐食しない樹脂製の配管ですので、改修の対象を共用部分に絞れる方向性が見えてきます。(ただしこの記載だけで改修の具体的な範囲や時期の全てが判断でききるという分けではありません。)

図4-マンション大手建設会社の特記仕様書の例(1986年竣工のマンション)
給水管は共用・専有共に「硬質塩化ビニルライニング鋼管」が使われているので改修が必要になる。共用部分の排水管は排水用鋳鉄管が使用されているのでいずれ改修を計画しなければならない材料だが、専有部分は腐食の心配がいらない硬質ポリ塩化ビニル管(記載は当時の呼び名である硬質塩化ビニル管)と耐火二層管(記載は当時の呼び名である石綿ビニル二層管)が使われていることがわかる。

 もう1つサンプルを見てみます。図5は、図4のマンションと同じ大手建設会社の特記仕様書で2007年竣工です。特記仕様書の記載からでは判断できなくなってしまいました。このような表現の場合は、系統図や平面図など複数の設計図面を見ていかないと判断できないので、専門的な知識が必要になってしまいます。

図5-図4と同じマンション大手建設会社の特記仕様書の例(2007年竣工のマンション)
共用部分の給水管はステンレス鋼管が使われている。
汚水管は排水用鋳鉄管を指定しているが、雑排水管は複数の管材に丸が付いている。どの部分にどの管材を使用しているのかは他の図面を見ていかないと判断できないので、専門家の力が必要になってくる。(排水用鋳鉄管の劣化と耐用年数の考え方については、このシリーズの後半に紹介する予定)

方法3:劣化診断調査を行う

 あってはならないことですが、竣工図面や長期修繕計画の記載が、実際の現場の状況と異なっている事も考えられます。

 その懸念を払拭するためには、配管の現物を確認するしかありません。

 しかしながら、室内の給排水管は、壁や床下など普段は目に見えないところに隠れているので、なかなか目視確認することができません。点検口などから見えたとしても、配管は保温材で覆われているので、配管そのものを目視することができません。そこで劣化診断調査を専門家に依頼する方法があります。

 タイミングとしては、2回目の大規模修繕工事を行う前の調査診断時や、築30年を迎えようとする頃の長期修繕計画の見直し時がよいでしょう。

 配管の劣化診断は人間の体と同じで、内視鏡やレントゲン撮影により行われ、より精度を高めたい場合は、実際に配管を現場から採取し、その実物を半分に割って内部を詳細に評価します。

有限会社マンションライフパートナーズ 柳下雅孝

(次号へつづく)

集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年11月号掲載