給排水管改修に備えるための基礎知識4
4 改修が必要な給水管は?
図7は、マンションで使われてきた給水管とその改修の歩みを示したもので、様々な管材が示されています。
初めて給水管の改修を行おうとされる方々は、恐らく平成以降に建設されたマンションの方々が多いと思いますが、その中でもズバリ「水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管」が使われているマンションが改修の対象になると思いますので、その配管にスポットを当てます。
逆に、昭和生まれのマンションは、恐らく共用部分の給水管改修を既に経験済みだと思いますし、その時に更新しなかった専有部分の給水・給湯管の事や排水管の改修をどうすればよいか悩まれていることと推察します。.
5 何故、塩ビライニング鋼管は改修が必要なのか
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(俗称:塩ビライニング鋼管、VLP)は、鋼管の内面に厚みのある塩化ビニル層(防食層)を設けることで鉄部と水が接することを防いでいるのですが、「ねじ接合」となることから写真1のように管と継手のねじ部分が水で接してしまい、鉄が酸化し錆こぶが生成されネジ部が欠損してしまいます。(写真2)
昭和40年代半ばに登場したこの塩ビライニング鋼管は、その後接合部管端面の腐食を低減させるべく、各メーカーが競って改良を加えてきました。昭和50年代に入り、ねじ接合部分の腐食対策として「水に接する管端面にキャップをしてしまおう」という発想から「管端コア」なるものが登場します。
しかし、「管端コア」を現場で逐次挿入しながらねじ込み施工するので挿入し忘れたり、施工の精度によってはコアの隙間から水が入り込み腐食を完全に防ぐことはできませんでした。写真3はその事例で、平成3年(1991年)竣工のマンションで、わずか築25年目で全更新を実施する判断をされました。平成生まれだから耐用年数が伸びていると思いたいのですが、一概には言えないようです。
そして昭和60年代に入り、ようやっと現在でも使用されている「管端防食継手」が誕生します。これは、継手本体に管端コアがあらかじめ組み込まれて製品化されているもので、「現場でのコアの挿入し忘れ」はこれでなくなりました。
しかし残念な事に、マンション内の全てに管端防食継手が使われるのではなく、従来のコーティング継手と併用されてしまっているケースが少なくないのが現状です。
結局、マンション毎に前号で紹介した劣化診断調査を実施しなければ現状を正確に知る事ができないのです。
6 現在の給水管材のトレンドは?
改修工事で採用される更新後の管材を紹介しますと、共用部分は「ステンレス鋼管」、「水道配水用ポリエチレン管」、「硬質ポリ塩化ビニル管」のどれかが使用されることが多いと思います。
専有部分については、現在ではやはり「架橋ポリエチレン管」が戸別のリフォーム工事も含めて採用されていることが多いと思います。
有限会社マンションライフパートナーズ 柳下 雅孝
(次号へつづく)
集合住宅管理新聞「アメニティ」2025年1月号掲載