
給排水管改修に備えるための基礎知識 5
7.共用排水立て管は住戸内にある
排水立て管の系統の組み方(排水の混ぜ方)や本数はマンションにより様々で、同じマンション内においても、お隣と間取りが異なれば系統の組み方や本数が異なることはよくあります。
つまり、間取りが異なれば、排水立て管が隠れているパイプスペースの位置も異なるということです。
図8は、これから排水管の更新工事を行おうとしている1987年竣工のマンションの間取り図に排水管をプロットしたものです。立て管は3系統に分けられ、管材はいずれも「鋳鉄管」が使用されております。浴室系立て管のみ「通気立て管方式」で、排水立て管(鋳鉄管)の横に通気立て管(鋼管)が併設されております。

図8-1987年竣工のマンション例(第3回で取り上げた図4と同じマンション)
8.改修が必要な排水管は?
図9に示すよう、マンションに使用されている排水管材は多くの種類があります。その選定は新築時のマンション販売者(開発者)や設計者の考え方により様々ですが、1種類に固定されておらず複数の種類が使い分けられていることが多いです。
現在排水管の改修工事が行われている管材は、図9の中で点線で囲った範囲で配管用炭素鋼鋼管、塩ビコーティング鋼管、耐蝕用塗装鋼管、排水用鋳鉄管が該当します。
①配管用炭素鋼鋼管(白)の腐食
歴史の古い配管材で、「白ガス管、鉄管、SGP」などと呼ばれ、雑排水管や通気管に多用されてきました。
鋼管の内外面ともに亜鉛メッキが施されているだけなので、全面的な腐食が生じてしまいます。排水管の中では最も短命な配管材です。
ただし、これから初めて排水管の改修を行おうという築浅マンションにおいては、この管材が使われている可能性は少ないと思われます。高経年のマンションにおいてこの配管材が多用されていたので、築30年手前で改修を経験することになりました。
②塩ビコーティング鋼管の腐食
配管用炭素鋼鋼管の腐食問題への対応と、マンション建設ラッシュによる施工省力化の要請を受けて、昭和50年代に入り登場したのが「排水用塩化ビニルコーティング鋼管」です。
通称「アルファ鋼管」と呼ばれるこの管は、配管の軽量化を図るため薄肉の鋼管を採用(100Aで1.0㎜薄)、接合はねじ込みではなく管を受け口へ差し込むだけの方法とし、工場であらかじめ必要な寸法に加工して現場に納品する「プレハブ加工工法」により現場施工の省力化を実現しました。
防錆処置として内外面ともに塩化ビニル樹脂による被覆が施されてはいますが、密着精度があまりよくなく、使用開始後25年を過ぎる頃に膨れ始め、そのうち膨れた被覆が剥がれると鉄部があらわになり、その露出された鉄部がピンホール状に腐食していきます。
このような過程で鉄部の浸食が始まった場合、そこが集中的に腐食し、もともと薄肉であるということで漏水に至ります。
また、差し込み接合部分の管端部分や溶接加工部分は、特に被覆が剥がれやすいので、局部的に腐食が進行している場合もあります。
そして今現在、この管材の改修も始まっています。
有限会社マンションライフパートナーズ 柳下雅孝
(次号へつづく)
集合住宅管理新聞「アメニティ」2025年2月号掲載