石神井公園団地建替え事業竣工 強固なコミュニティが可能にした建替え事業(2024年1月号掲載)
昨年の11月19日(日)、Brillia City石神井公園ATLAS(旧石神井公園団地)の街びらきイベントが開かれた。同イベントには建替え組合理事長や、建替えに携わったデベロッパー関係者、評論家の山田五郎氏等を招き行われた。イベントでは、建替えまでの道のりや、建替え後、旧石神井公園団地で培われたコミュニティをいかに継承して行くのか、と言ったことが話し合われた。その後の個別取材の内容も含め、この建替え事業がなぜ成功し、そして、今後どのようなマンションを目指していくのかをお伝えする。
順調に決まった建替え
同建物は、石神井公園団地の建替えに伴い新築されたもので、建替え前後の建物概要については、別表の通り。
さて、マンション建替えは2024年1月現在、決議には5分の4以上の賛成という要件に併せ、石神井公園団地は団地一括建替えのため、建物各棟で、3分の2以上の賛成も必要となる。
この困難な決議要件に対し、同団地では、最終的には9割を超える賛成で団地一括建替え決議が可決された。
その過程を建替え組合や事業協力者に聞くと、「順調」の一言に尽きるようだ。
地域への愛着と強固なコミュニティ
なぜ同団地では、困難とされる団地一括建替え決議が「順調」に決議出来たのか。その大きな要因は、地域への愛着と、築50年の間に築かれた強固なコミュニティにある。
建替えの説明会での質問が「夏祭りはどこで」
同団地では、建替え前までに夏祭りを35回、文化祭を32回開催。その他団地内に11のコミュニティサークルが存在するなど、コミュニティ活動が非常に盛んであった。また、コミュニティサークルによっては、団地内の人にとどまらず、団地外の人も含めて活動。夏祭り、文化祭も団地外の人も参加するなど、その活動は団地内にとどまらず、地域の活動にもなっていたそうである。
こうした長年の活動もあって、団地居住者の間には、強固なコミュニティと地域への愛着が生まれていった。
イベントの中で黒河内理事長が話していた事だが、建替えの説明会で「夏祭りはどこでやるのでしょうか」という質問がでたという。それぐらい居住者の中で大切な年間行事になっていた。なお、この声を受け、新しい建物の真ん中に夏祭りを開催できる場所が設けられている。当日のイベント開催場所がまさにその場所で、イベントにはもちろん地域の人達も参加していた。
居住者の要望をこまめにくみ上げ
事業協力者の協力も大きい。
建替え事業では、2014年に居住者の要望・不安・課題に応える「よろず相談室」を設け、様々な要望や不安等を新しい建物に反映させている。
その一つが、建物の配置。旧石神井公園団地は、公団系の建物としては珍しい、全面南向きの雁行型の住宅配置で、この形が継続されることを望む居住者が多かったため、新しい建物でも建物8棟が雁行型に配置され、全面南向きになっている。
また、入居以来半世紀近くの間に大きく育った植栽をできるだけ残し、石神井川沿いに移植した。個人の居室についても、例えばトイレの配置も、介護しやすい配置にするなど、個別の要望にもきめ細かく応じている。
その他、仮住まいが必要な居住者には、UR都市機構の協力を得て、100戸分の賃貸住宅を斡旋。こうした配慮もあって、490戸のうち301戸(戻り率約61%)が新しい建物に移っている。
このように順調に進んだ建替え事業だが、次なる課題は、築き上げたコミュニティをいかに新しいコミュニティに継承していくか。この点については、またの機会にお伝えする。