7.大規模修繕あきらめ型マンション蓄積の理由

 前号で群馬の多くの管理組合で修繕積立金が決定的に不足している状況を報告したが、それは各分譲時期別の平均的金額で表した数字に過ぎない。各マンションの金額分布を示すと問題の構造がより明確になる。分譲間もないマンションの金額は業者が設定した金額だから比較的上下の幅は少ない。第1回の大規模修繕が近づくと高額と低額に分解する。高額化した時期が大規模修繕の実施前か後かは不明だが、ともかく大規模修繕に関連した値上げであることは間違いない。

 ところが徴収額ゼロも大量に出現する。多くは自主管理だから、修繕費が管理費に含まれる場合も少なくない。一括徴収に変更しただけなら、さほど問題視する必要はないが、管理費そのものが低額化しているのだから、修繕費を貯める余裕は無いようだ。修繕費を管理費の1割又は2割と機械的に決めている場合も少なくない。当然それらには長期修繕計画はない。初期の分譲マンションでは駐車場の設置率が低いから、駐車場収入は当てにはならない。

 要するに大規模修繕を諦めてしまったマンションが増えている。さらに古いマンションでは高額徴収組が消え、ゼロ又は低額徴収が増えるから、中古を値下げしても空き家が埋まらない。修繕放棄に近い状況が生まれる原因は単に住民意識の問題でなく、むしろ社会構造的理由が多い。それらを以下に挙げる。

(1)群馬のマンションは県外分譲業者の進出撤退の繰り返しで蓄積したから遠隔管理が多い。(2)地元業者が分譲した事例では管理会社とは名ばかりで適切な情報を住民に提供できなかった。(3)初期の分譲住宅の多くで店舗併設が多いが市街地の空洞化の影響を受けて空き店舗が多い。空き店舗は管理費等の滞納が発生しやすい。(4)分譲業者の倒産が多く、その場合は当初から管理が混乱。(5)マンション相互の情報交換が乏しい。(6)行政は建築後には全く関心がなく、実態把握さえしていない(個人資産の問題とし行政は関与を避けるだけでなく、市街地の空洞化を促進する郊外の開発に邁進し、町壊しの都市計画が横行した)。(7)多くの中古評価は築年数、立地、広さが中心だから例え一部の管理組合が熱心に維持管理をしても同時期の大量の不良マンションに埋没した。(8)初期の分譲マンションは管理事務所さえない場合が多かったことも管理機能低下の原因となった。修繕放棄と低価格化はどちらも原因であり結果となった。

 ところで修繕放棄は群馬県だけでなく東京都など大都市でも発生する。大都市中心部では長期経過マンションでも多くの中古価格が高く維持されるから、平均的修繕積立金額は上積みされるものの、一方低い修繕費またはゼロ組に転化する割合が増している。多くは30戸以下の小規模マンションだ。諦め型マンションを再生するのは難しい。そこで新たな諦め型をこれ以上生まない対策が必要だ。それにつけても群馬の不良マンションの山は大都市圏のマンションの今後を考える上でいい教材になる。是非そっと見られたい。(つづく)

(2008年7月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)