6.分譲マンションの修繕費―何時まで持ちこたえられるか

 分譲マンションの管理費や修繕積立金は住宅ローンを支払う身にとっては安い方が助かる。とは言え、慣れない人があらゆる管理業務を持ち回りでするには不安があるし、まして建物の保全がいい加減であれば資産価値を維持できない。必要性は認識していてもどのくらいの金額が適当かについて購入者は客観的科学的判断根拠を持っていない。強いてあるとすれば同時期に発売するマンション広告に示された事例比較と自分の懐具合である。

 売る側にとってみれば管理費は管理会社の経営の根幹に関わるから、高い方がありがたいが、高すぎると客が逃げやすいから周辺の新築物件に比べて大きく変わることはリスクが大きい。そこで多くのデベロッパーが提示する金額は管理費と修繕積立金の毎月支払い額の合計が、客層の支払い限界額を超えないように調整する。修繕積立金を低く押さえておけば管理費を高く設定しても負担感は変わらない。大半の分譲マンションでは、デベロッパーは駐車場収入を管理費に投入する方式をとるが、この方式は極めて便利で管理費名目の総収入を大きくするものの管理費の個別徴収額の高さを抑えることができる。建物や駐車場の修繕費問題を取り合えず後回しにして、販売しやすい条件、管理費のとりはぐれが生じ難い環境を作るのが多くのデベロッパーの共通した販売手法だ。

 ともかく超高層住宅であれ、そこで低層・中層であれ、地域、規模に関わらず修繕積立金の最初の設定額は一般的に低い。東京都内、都下、埼玉県、群馬県の管理開始年別の㎡当たり修繕積立金額を比較した。都内のマンションは小戸数規模が多いにも関わらず、経過年が大きいほど単価が上昇する。これは都下、埼玉も同様であるが、但し都下のマンションは1980~1984年をピークに埼玉県では1985~1989年をピークに、それぞれの地域で、すなわち25~30年、20~25年経過をピークに古いマンションの金額が落ち始める。

 管理開始して20年以上経過すれば、当初入居者も定年に達し、所得低下する者が増えるが、経過年数が増すほど中古価格単価も低下し、特に都内に比べて都下、埼玉の順でその傾向が強まる。中古価格の低下が早いほど、中古購入者が所得低下する。修繕積立金額のピーク到来時期が早くなる。

 それにしても大都市圏のマンション管理組合は、総体で見れば結構頑張っている。ところが群馬県となると、様変わりする。2005~2009年の新築間もない段階では大都市圏マンションの単価とさほど変わらないが、古くなるほど乖離幅が大きくなり、1990~1995年をピークに、乖離幅は拡大する一方である。15~20年経過時点で一杯々である。
詳細に見れば、高額とゼロ又はゼロに近い低額に二極分解するが、1990年以前では、年数を遡るほど、高額部分が消え、低額に一極集中する。大規模修繕が延期されるか実施の見込みがないマンションが増えるが、立地条件だけが決定要因ではない。駐車場不足や空き店舗も影響する。さて大衆化した超高層は何時まで必要な修繕費を維持できるだろうか不安だ。(つづく)

(2008年6月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)