2.~これまでの30年、これからの30年~その2

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員:竹田智志

 

草創期のマンション

古いマンション(1950年代の供給)、集合住宅は賃・分を問わず、大屋根・屋上付近にTVアンテナが林立し、どうしても目立つのだが最近は、滅法減少してきた。区分所有法も無かった時代に建設され、それがそのまま残ったのだろう。
筆者が研究室に通っていた時分、稲毛駅で快速電車を降り、総武線の各駅停車に乗り換えるとすぐに南側の車窓に、いかにも古めかしい住宅群として見えてくるのが、UR分譲第一号の稲毛住宅団地だった。4階建てで10棟ばかりが2列に並んで立っていたように思う。
この当時に供給された住宅団地の特徴は、同潤会アパートと同じように、コンクリート神話が浸透していたのであろう、長期修繕計画等も無ければ修繕積立金すらない、管理といえば対症療法のみというのが現状だったろう。ところが、07年頃、車窓に広がる風景がいつの間にか一変した。現在の建物群は4階建てと、5階建てとなっており、南北に2本の通路があって、駐車場スペースと緑地が広がる。入口には、高さ5m程のゲートがあって関係者以外立ち入ることができない。さながら我が国版のゲートシティといった面持ちである(写真上)。

(写真上)

民間分譲マンションの国内第1号である四谷コーポラスは、入居60年を超え現在、建替え工事が進んでいる。JR・地下鉄の「四ツ谷」駅から徒歩5分圏内、外堀が隣接し都心にも関わらず、閑静な雰囲気の中に佇んでいて、やがて現代的なバージョンを備えた建物として姿を見せるのだろう。来夏にも竣工する見通しである。
当時の、超高級住宅であり、憧れの的。コミュニティが充実しているものの高齢化の波が急速に押し寄せながらも、建替えに舵を切ってからというのは、とても円滑な進行というのが印象である(写真中)。

(写真仲)

最後に、宮益坂ビルディングだが、東京都が53年に供給した公的分譲マンションの第1号である。渋谷の中心とも云えそうな「ひかりえ」とは地下鉄銀座線を挟んでお隣同士。あの渋谷しかも駅前に隣接する建替えとあって、建替え計画はスムーズで、軽やかに進行したかに思えるが、実は相当な難産であった。
というのは、このビルディングは、店舗、オフィス、住宅から構成されていて、いわゆる複合用途型。区分所有者それぞれの区分所有権に対する目的が異なっている。また最大のネックは、同ビルディング敷地が借地であった点で、建替えの為には、それぞれの区分所有者が土地の持分権を取得する必要があった。費用負担を伴う建替えの困難さは相当である。
25年以上にも及ぶ建替え計画への取組み、ディベロッパーの撤退、建替え決議無効を巡る裁判、これらのハードルを乗り越えて漸く着工へ辿り着いた。2021年春、日本一おしゃれな街に新たな容姿が現れる(写真下)。(つづく)

(写真下)

集合住宅管理新聞「アメニティ」429号(2018年6月)掲載