11.ペットの飼育問題

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員:竹田智志

 いわゆる三種の神器に加えて、当時の管理問題に影を落としていたのは、マンション内でのペット飼育である。犬や猫の飼育によって混乱が生じるのを避けるために一律飼育禁止というのが、集合住宅の合意事項だったような気がする。

 83年法施行後の管理規約のうち、住宅都市整備公団(UR)による団地管理組合規約によると、いわゆる生活協定第3条の禁止事項の中に、「小鳥及び魚類以外の動物を飼育すること」と記されている。
一方、賃貸住宅は、その賃貸借契約書上の第17条で動物飼育の禁止を定め、「借主は、賃貸住宅のある団地内において、小鳥及び魚類以外の動物を飼育してはならない」とする。ご存知のように分譲住宅は、区分所有法31条が規約の設定、変更及び廃止につき特別多数決によって変更できるものの(管理組合の中には設立総会で、この当該規約を廃止する決議を為したところがある)、賃貸の方はそうはいかない。

 現在は、一律禁止の流れはあるものの、入居当初からペット飼育を可とするマンション(賃・分)が増え、この課題への注目度は減少してきたように受けとめられるが、既存の賃貸マンション、分譲住宅団地では、当然のことながら契約、規約の遵守ということになるのだろう。

 それはそうとして、もう四半世紀以上も前のことだから、ちょっとだけエピソードを話そう。筆者の夜討朝駆時代、先の契約、規約を推進した人物のお宅に訪問する機会があった。その時、玄関扉の向こうで「ワン」といったか「ニャー」といったか定かではないけれども、確かに聞こえた。そして、そこは確かに分譲マンションであった。

 もうひとつは、世の中にはこのような職業があったのかといったことを実感させられた、ある管理組合の体験談だ。夜中に業者の人たちと伴に住宅団地内の猫を捕獲したというのである。今ならすぐさま、動物虐待ということになるのだろう。猫を捕まえることで職業が成立するらしいことを初めて知った。

 

この芝生はグリーンベルト、それともパーキングか

 それから、野良猫捕獲箱の設置というのもあった。飼い主がいるのかどうか判別がつかず(自ら公表はしない)、組合が対処を迫られても埒が明かない、どう対応するか悩んだ挙句に、大きな捕獲箱を敷地内に設け、捕獲された猫の飼い主が名乗り出てきたところで、飼育についての是非を問うことにした。筆者としては、この箱の設置が“脅し”であるとは書けない。後日、○○協会と名乗る団体が、拙宅の玄関先で、「こんなけしからん記事を書いたのはオマエか」と迫られた。

 さらに、駅前の居酒屋で、同じぐらいの時間に同じ場所で飲む人物が現れ、同業者ゆえに仲良しとなった。ある日の深夜、誘われるがままにお宅にお邪魔すると、その折り迎えてくれたのは成犬のハスキー、その友人は「深夜まで自分を待ってくれるのはコイツだけ…」とぽつり。このお宅も分譲マンション。かの規約の所在については、十分に承知していたはず。

 この頃の管理組合には出口の見えない課題ばかりが、手を変え、品を変え津波のように押し寄せては来るが、管理組合という船は、決して沈まない。超えられない波は与えられ無いようだ。(つづく)

集合住宅管理新聞「アメニティ」438/号(2019年3月)掲載