40.リビルディングロード⑬
マンションの建替え規定は、83年(昭58)区分所有法によって確立した。その目的は、「居住の継続の確保」ということになるのだろうが、建替え実現に向けた困難性についてはこれまでにも何度か触れてきたところである。
大体、旧宇田川住宅団地(渋谷区)が基本であるから、同住宅と同じような条件が整わない限りコンセンサスを得るのは難しい訳である。結果、老朽化ストックの建替えは今後ますます先細りの傾向を示すのではなかろうか。
当シリーズの前任者である故・松本恭治先生と雑談を交わす中、マンション建替えのウルトラCは何かについて度々議論した。先生は「換地」(敷地の交換)建替えというアイデアを披露してくださったりもした。筆者は「リガーレ日本橋人形町」の事例で見られたような面開発にマンションを含むという考えであったり、駅前等拠点再開発の際に近隣住宅団地を吸収する型の建替え案を話し、時の経つのも忘れ夢中(霧中?)になったものだった。がこれは都市圏の場合であり、両者共、区分所有の目的を逸脱しての議論だと認識した上での話である。
さて現実には既に、所有者不明土地問題もさることながら、区分所有者不明マンション、賃貸化、空き家化、放置化マンションが、増加し続け四方八方から都心に迫っている状況下にある。こういった中では、建替え問題はむしろ「逆行」の誹りを受けざるを得ないのかもしれない。
いや、そうではない。たとえミニマムであろうと、我々が議論し合理的なグランドデザインを互いが持ちつつ(踏まえた上で)、その軌道上に、マンションという居住の形態を位置付けていかなければならないのだ。
従来の駅前再開発といった範疇から脱皮し、拠点型再開発上に、「スマートウェルネス住宅等の推進」に沿った、換地を含めたマンション建替えの導入があっても良いのではないか。スマートウェルネス住宅等であれば補助金も得られよう。それによって、最寄駅を中心とした新たな市街化を進め、道路・鉄道を併せた放射状の「核」を設けコンパクトな街並みの構築に繋げられればなどと思いを馳せる。
以前、マンションという集合建物につき、若い建築系の研究者と議論する機会があった。彼等は、コミュニケーションを前提に、今後、各マンションが抱える課題であろう再生・建替えについて積立金制度を設け、あらかじめ対処すべきだと主張した。
筆者としてはでも、記者として駆け出し時分に経験した修繕積立金制度の創設を振り返りながら、再生・建替え積立金の導入は、消極であり不可能であるとも考える。将来の形の見えない物に対して区分所有者が、金銭を蓄えることなどあり得ないからだ。
建替え問題を総括するに当たって、今後あまり遠くない時期に、「当該マンションには、若い時分から住むだけ住んだし、危険も孕む。だからここで『終了・解散』を迎えないか。この終了・解散という段階を迎えるに当たって、多数決で決議できないか」。こういったことを踏まえ、真剣に議論する時期が目前に迫っているようにも思われる。(つづく)
明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年8月号掲載)