区分所有3度目の法改正に向けて③

 では、区分所有法制研の2度目の会議(6月)を覗いてみよう。マンション建替え、震災時の復旧につき実績を持つディベ(①、②)、コンサル等(③、④)へのヒアリング調査が主な内容である。

 まずはディベロッパーからの意見では、①は、議決権要件の緩和は再検討を要請、法63条1項の催告の有効性維持、建替えのコンセンサスにおける4分の3への緩和を支持。所在者不明の決議カウントにつき判断基準の困難さを指摘(除外してもいい区分所有者の非訟措置を提案する)。法40条における共有者の扱い(0.5の持分権の行使)。身寄りのない区分所有者の成年後見の対応の要請や被災マンション法における適用期限の延長。法61条8項、12項の延長、全部滅失時の土地共有者団体の設置の提案といった多面的な意見が出された。

 ②は、建替え決議時の所有者と名義の不具合を挙げ、相続の未完了ケースの多発化を示唆。また決議招集通知等で外国籍の所有者に対し連絡できないケースもあるとし、建替え決議が当日だけで議決されるのは困難性を一層深刻化させているとする。さらに借家権への対応の措置を求めたほか、団地の建替え決議における棟別決議への疑問等が挙げられている。

 他方、コンサル側からの意見は、③は、老朽化建物の増加を踏まえ、建替えや敷地売却を行いやすい環境の整備を要請。合意形成のハードルが高いとした上で、建替え決議の在り方、団地においては各棟要件の混乱、建替え反対者の性質の変化、高齢化に伴う建替えインセンティブの減少、決議要件緩和への期待が述べられている。

 ④は、高齢化に伴い現状維持を望む区分所有者の増加傾向を示唆、合意形成の緩和に積極的である。また借家人の扱いにおける補償の必要性、敷地売却制度における「著しい老朽化」の判定基準、他用途変更マンションへの対応を挙げる。

 さて、単棟型・団地型マンションの建替えにつき、概ね、ディベ、コンサルともに決議要件緩和へのシフトには好意的であると見られる。また敷地売却制度等については、制度の拡充に理解を示しつつ、更なる具体化を望む傾向を示しているようだ。

 では、こういった制度の見直しのみでマンション建替えが鰻登りに増加するのだろうか。確かにここまでの議論では、コンセンサスの緩和については異論がないように思われる。中には確実に増加すると断言する報告も見られた。が筆者としては、老朽化マンションの建替えの進展はコンセンサスの緩和のみでは進まないと見ている。

 読者の皆さんには何度か申し上げてきたのだけれども、どうも宇田川住宅団地(東京・渋谷)に始まり今日まで続くマンション建替えのファーストステージは、費用負担とコンセンサスが一体不可分で、これらが一定水準を上回らないと上手くいかない。このことはすでに何度か本紙で報告してきた。

 第1回、2回の区分所有法制研による議論は始まったばかり(本紙報道)で、全体像は今後の展開から見出せるのであって、結論が見えているとは到底言えないが、今のところコンセンサス緩和が前面を覆っている。

 なお1210日付、日本経済新聞は一面トップで、「政府見解として、マンション建替え賛同四分の三以下、老朽化物件増に歯止め」という報道を行った。筆者としては建替えへのコンセンサス緩和策だけで老朽化物件増の歯止めになるとは思えないのだが…。(つづく)

住宅団地が全面に広がるなか、一方は4度目の大規模修繕工事に着手、他方、来年を目処に建替えに着手

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集員 竹田 智志

集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年1月号掲載