区分所有3度目の法改正に向けて⑤
先回、この改正の主目的はコンセンサスのレベルの再編ではないかと述べた。だとすると問題は、「4分の3以上」は例えば「建替え」で、共用部分の変更は「3分の2」、「過半数」は今のまま推移ということになるのだろう。
となると、緊急事態への対応では、復旧(61条)はどう扱うか。解消(区分所有関係の終了)は、どう配置付けされるか。マンションの今後につき続々とメニューが増えてきつつはある。が単純にコンセンサスの割合の変更のみとはならない場面が登場する。どう整合性を保ちつつレベルを再設定していくかが問われるだろう。これは相当に厄介な問題だけれども筆者としては興味津々といったところだろうか。
さて、気掛かりなのはこれだけでは無い。昨年11月開催された第8回の同法制研で取り上げられたのは「区分所有建物の管理のための新たな財産管理制度」であった。ご存知のように、所有者不明土地問題は、九州地区全体を超える国土の領域に達したとされている。
これが区分所有建物を含むとすれば、所有者不明状態に陥った専有部分は一体どれだけの戸数に達するのであろうか。恐らく把握されている戸数はアバウトであろうし(データ上の分析)、誰がどのように把握しているかは判らない筈だ。
当シリーズ前任者である松本恭治先生と筆者との会話の中で記憶に残っているのは、地方都市に広がる「放置マンション」の爆発的普及である。土地の有効利用を促し区分所有建物か或いは賃貸マンションを建築する。当初は、建築主や開発業者の尽力により入居者は整っているように見えるのだが…。
その実、これは当初のみ。東京から北へ向かって主要駅近隣のマンションを踏破してみると、埼玉では約2割が空家、栃木で5割、福島7割、仙台で少し持ち直すも、価格はほぼ滑り台状態、入居時に最も高額で後は下がる一方だというものだった。これが岩手、青森となると入居1年後を目処に、ほぼ空家の方が歴然と多くを占めることになる。もちろん例外はあるのだろうが。
マンションの場合、空家化→賃貸化→放置化と順追って進むものではない。一挙に変わることが普通なのである。次から次へと新しい建物が街に登場する。すると空家が次から次へと増殖する。まるで止めようの無い負の再生産だ。
この対応につき、同法制研の資料では、所有者不明専有部分管理制度(仮称)の創設を準備する。また管理不全に陥った区分所有建物の管理のための財産制度では、管理不全専有部分管理制度か管理不全区分所有建物管理制度(いずれも仮称)を準備するという。
要は、所有者不明の専有部分が単独であれ複数であれ、いわゆる「管理人」を選任し一体的管理を復活させるというものだ。現行法上は民法第25条、952条を利用しつつ、改正民法の264条の二以下を基調としている。
一見して感じるのは、「区分所有者の団体」が所在し対応できるのであれば、何らかの効果が期待できそうだが、そうとばかりとは限るまい。果たしてどのような効果が望めるか気になるところだ。(つづく)
明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集員 竹田 智志
集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年3月号掲載