区分所有3度目の法改正に向けて⑦

 先月の1617日の両日、日本マンション学会の30周年記念大会が行われた。3年ぶりの大会開催ではあったがコロナ禍にあり、リモートによるものとなり参加は登録制、画面越しの大会となった。

 当該シリーズの課題とリンクすると思われるテーマは、①国土交通省住宅局参事官・矢吹周平氏による記念講演「マンション政策の成果と展望」と②周藤利一大会委員長・横浜市大客員教授を司会に、鈴木克彦会長・京都橘大教授、折田泰宏弁護士、鎌野邦樹早大法科大学院教授らによるパネルディスカッション「マンション新時代とマンション学」の2点。

 ①では、この4月から施行された改正マンション管理適正化法と建替え等円滑化法関連のスキームをコンパクトにしかも判りやすく解説。管理組合を全面に押し出した管理のあり方を学ぶ絶好の機会となった。

 管理水準の底上げを図るため、その全体像は、マンション管理適正化推進計画制度を立ち上げ、さらに管理計画認定制度の導入、そのフォロー体制として管理適正化のための指導、助言等を行っていくというもので、この事務の主体は地方公共団体、さらに認定制度を設けることで、管理組合によるマンション管理自体の徹底とインセンティブを設けることでの進展に向け、これまでになく強力に押し出している。

 基本的な時系列面では、マンション入居後、管理組合が中心となって、管理→修繕・改良を繰返し、修繕・改良が困難な場合→建替え、敷地売却といった選択肢が登場してくる(図解・全体的構図)

 筆者としては、随分と多彩なマンション施策であると改めて痛感した。とはいえ、不足する修繕積立金問題では、これまでと同様な指摘に留まっている(専有床面積1㎡当たり200/月)。20年ほど前になるだろうか。計画修繕の普及に併せ「修繕積立金基金」なるものが登場してきた。マンションの購入に際し不足がちな積立金をあらかじめ、購入時のローンに上乗せして確保するものだ。これは一体何だったのだろう。

 管理費等があからさまになる事で、マンション購入が鈍る事を踏まえ、管理費等を低廉に抑える。ディベ側の苦肉の策だったのか。とはいえ、第1回目の大規模修繕で既に積立金が枯渇する状況に陥るケースが多いというのは、13年ないし15年間これを伏せておくという事なのだろうか。少し割り切れない気がする。

 なお、パネルディスカッションでは、今後、サスティナビリティー(持続性)、インクルーシブネス(包摂性)、レジリエンス(回復力)をキーワードに居住者の生活現場と向き合った臨床の知を大切にした学術活動が求められているといった指摘のほか、現行区分所有法を前提とした区分所有法の改革として、管理組合の法制化、管理所有制度の利用、あるいは最近復権しつつあるアメリカのコーポラティブ制度の導入といった提案がなされたほか、現在、区分所有法制における岐路を提示する示唆とともに、マンションが抱える課題が一方では費用負担を伴う問題として浮上、その際、法を前提とした解決策の模索を図る。他方では、ボランタリー的問題の解決策を探るといった両方向性への対応が重要性を増しているとした指摘があった(つづく)。

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年5月号掲載)