区分所有3度目の法改正に向けて⑧
4月までに開催された区分所有法制研は既に13回を数える。テーマは、区分所有者による決議のコンセンサス割合の変更だが、どうやら建替え、復旧その他諸々のメニューにおける変更とメニュー間での割合の整合性を議論する段階を迎えたらしい。ある程度の方針を固めた段階で法制審議会の場へ移行していくものと思われる。
私事で恐縮だが、筆者の方はというと、先月末までに学会等の研究会、記者懇、サロン等が相次ぎ、なかなか忙しい思いをしたのであるが、今回は同法制研との関わりで気になった事を述べさせて戴こうと思う。
まずは、跡見学園女子大学の鍵屋一教授による「首都直下型地震とマンション防災」では、防災の核は首都圏であれば各マンションだということ。そして、それを担う組織・パーツこそ管理組合なのだということだった。
マンション管理士で編集者でもある飯田太郎氏の「マンションの60年とこれからの展望」といったテーマでの講演では、これまでのマンションの歴史的な振り返りとともに、減災・防災面において既存の建物に比較し、マンションが優越性を確保。二地域居住の拡大(都市居住+田園居住)、維持管理面の大切さを理解し習慣づけられることで発展の可能性は大だとする。ここでも中心的な担い手は、管理組合であった。
先回の当該シリーズでは、マンションの管理水準の底上げを図るため、マンション管理適正化推進計画制度を設け、さらに管理計画認定制度の導入、そのフォロー体制として管理適正化のための指導、助言等を行ない、この事務の主体を地方公共団体に、さらに認定制度を設定し、管理組合によるマンション管理自体の徹底とインセンティブを設けることでの進展に向け、これまでにない強力な推進体制を整えると報告した。
筆者としては、ここまで管理組合がクローズアップされている事を踏まえ、区分所有法が管理組合という団体(法第3条)を正面から認知し明文化する時期を迎えているのではないかと考えている。すると勿論、管理組合とは(内容面)、基本的な枠組みにつき議論されることになるだろう。コンセンサスの変更と伴に、この点の提示にも期待を込めたい。
さて、とても気になる判例も登場してきた。今年1月にマンションをグループホームで使用する事は認められないとした大阪地裁の判決である。事案の概要からすると、あるマンションの2居室を社会福祉法人が賃借しグループホームとして使用(重度の介護者用)していたものの、これが当該マンションの管理規約に反し共同利益背反行為にあたるから、使用の禁止を求め、認容されたものである。
裁判所の判断は、同法人による業務に焦点を当て規約に反している事を率直に認めた。法人側は、住宅としての範疇をけっして超えるものではないという主張であったが、筆者としては、裁判所の判断が至極当然で、法人側が用途の変更を申請するなど対応を怠っていると評価した。報道は、障害者への差別ではとするものの他、判決に否定的なものがあった。
入居当初から、こういった施設を含むケースでは、この様なトラブルは生じてこないだろう。既存のマンションだから、その受け入れに支障をきたす。が問題の所在としては、マンションの高齢化が進み、要介護者が続出した場合の対応を考慮すべき時期を迎えつつあるのではないかという点である。この点につき、管理組合がどう判断し、どう対応するのか。
かつてのような、当然に構成された団体任せでは、もはや乗り切れまい。(つづく)
明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2022年6月号掲載)