区分所有3度目の法改正に向けて⑰

 2月13日に開かれた第5回会議のテーマは、「区分所有建物の管理の円滑化に係る方策(2)、(3)」と「被災区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(1)」である。

 具体的には、管理の円滑化(2)につき、①区分所有建物の管理に特化した財産管理制度として、・いわゆる所有者不明専有部分の管理制度、・管理不全専有部分管理制度、・他の区分所有者による専有部分の保存請求、・管理不全共用部分管理制度の創設を議論、つづいて、②管理組合法人による区分所有権等の取得、③当該区分所有者が国外にいる場合の国内管理人の仕組みの創設について審議された。また、管理の円滑化(3)につき④区分所有建物の管理に関する事務の合理化として、・ウェブ会議システムの活用、・事務の報告義務違反に対する罰則規定、・規約閲覧方法のデジタル化等併せて10項目となる幅広い審議の場となった。なお、被災区分所有建物の再生の円滑化方策については後日審議となった模様だ。

 さて、幅広い議論の展開とはいえ、重要なのは「区分所有建物の管理に特化した財産管理制度」と「集会の決議を円滑化する仕組み」(研究報告書第2款7頁以下)の交錯で、法制研においては、いわゆる多数決要件の緩和を考察する際、大きく踏み込んだ領域だ。具体的には所在不明区分所有者を決議の母数から除外する、総会出席者のみの賛否で決議する(構成員権の抹消・剥奪)も議論された。ここでは「財産管理制度の創設」につき審議されている。もう少し詳細に追ってみよう。

 まずその第一は、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度であるが、(1)所有者不明専有部分管理制度の創設を考えている。これは、裁判所が区分所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない専有部分につき、必要であると認めるときは、利害関係人の請求により、当該所有者不明専有部分の管理にシフトした管理人(「所有者不明専有部分管理人」という)による管理を命ずる処分をすることができる所有者不明専有部分管理制度と呼ばれるものである。

 次に浮上するのは、同管理人が認容された場合、その構成員権(可否を意思表示できる権限)の範囲が問題となる。例えば変更行為につき修繕は議決権行使を認め、建替えは認めないとか。さらには管理命令の対象となる財産の範囲はどこまでか。例えば、所在等不明区分所有者の有する動産ほか、共用部分、付属施設、敷地利用権等といった範囲の問題が生じてくる。

 その第二としては所有者不明ではなく管理不全の場合の専有部分管理制度の創設である。これも裁判所が利害関係人の請求により管理不全専有部分管理人による管理を命ずる処分をすることができるとされた財産管理制度だ。

 この場合も同様に管理不全専有部分管理人の構成員権、対象となる財産の範囲が議論の対象となる。また、これに関連し、その第三として他の区分所有者の専有部分の保存請求といった問題も生じ審議の対象となった。

 当然のことながら、その第四は、管理不全共用部分管理制度の創設に及び、財産の範囲をどこまでとするか、管理組合法人による区分所有権の取得、区分所有者が海外に赴任していた場合、当該区分所有者が国内管理人の選任を行える様な仕組みについても議論された模様である(つづく)。

所有者不明土地・建物管理制度の手続(法務省H Pより)

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年3月号掲載)