区分所有3度目の法改正に向けて⑳

 第7回会議(411日開催)と第8回会議(512日開催)につき主だった内容について報告すると、第7回の調査審議は、1.区分所有建物の管理に係る方策(4)(5)、2.区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(建替え等)、3.区分所有建物の管理の円滑化に係る方策(集会決議の円滑化等)で3の中で予定された財産管理制度等は後日審議となった。

 第8回会議では、

 ①区分所有建物の管理の円滑化に係る方策(所有者不明専有部分管理制度、管理不全専有部分管理命令、管理不全共用部分管理制度等)、

 ②同方策(共用部分等に係る請求権の行使の円滑化、管理に関する事務の合理化、事務の報告義務違反に対する罰則、規約のデジタル化、建物の全部滅失時の管理の円滑化、団地内建物の一部及び全部滅失時の管理の円滑化)、

 ③区分所有建物の再生の円滑化に係る方策(建替え決議時の賃借権等の消滅、建替え決議時の配偶者居住権の消滅、建替え決議時の担保権の消滅、区分所有関係の解消・区分所有建物の再生のための新たな仕組み、区分所有建物の敷地の一部売却等)、

 ④同方策(団地内建物の一括建替え決議の多数決要件の緩和、建替え承認決議の多数決要件の緩和、団地内建物全部についての一括建物敷地売却制度、同敷地分割)、

 ⑤被災区分所有建物の再生の円滑化に係る方策

 といったところである。第7回会議の2、3と、8回会議の ①から⑤は二読目になる。

 この2回の会議で調査審議された議題のうち、真新しいのは、もちろん既に同研究会で俎上には登っていたものの、共用部分に係る損害賠償請求権等の行使の円滑化についてである。どうも「管理者」による訴訟追行につき法と実態には乖離部分があるように思われるのであるが、これに加え、請求権が現区分所有者は当然として元区分所有者にも及ぶかとなると問題は複雑さを増す。既に海外では、元区分所有者を含んで請求権を認める動きがあると聞くが、この点の整理が今回の改正にまで含まれるかどうかは見通せない。

 ところで、この改正に向けて、第8回会議までに全国マンション管理組合連合会(略称:全管連19団体2733組合251528戸)から「要望書」が提出された。その内容は、中間試案の公表前に同法制審で取り上げて欲しい論点につき要望するものとしている。

 論点として取り上げているのは8点で、1点目から順次紹介すると、

 ①区分所有者の適正管理義務について(区分所有者相互間で適正に管理する義務を「法的義務」として負うことを求めている)、

 ②第三者管理の規制(管理会社による同管理方式への拡大を懸念しつつ監事を必置機関として監査機能の強化を求めている)、

 ③権利能力なき社団である3条団体名義での登記、

 ④管理組合法人を非法人に戻す手続の創設、

 ⑤管理費等債権の優先化、

 ⑥管理費等債権の放棄・免除の明文化、

 ⑦一棟リノベーションの積極的検討とその展開についての情報提示、

 ⑧区分所有建物の中心が「居住」用マンションであることを踏まえた展開の重要性を求めている。

 マンション管理の最前線で日々、諸課題と接する団体の声だけに切実である。同研究会開催時に突然俎上に登った「一棟リノベーション」はやはり関心事だ。(つづく)

 

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年6月号掲載)