区分所有3度目の法改正に向けて㉓

 83年区分所有法が、管理の主体は「管理組合」であるとし、それを踏襲し普及してきたのであるが、当該改正法は、様々な課題点への対処として膨大な手続きの羅列を行っている。管理組合は一体、誰にどう相談し、どのような決議のもと、団体の意思を表示していくのだろうか。3日までに寄せられた「中間試案」へのパブリックコメントは興味津々といったところだが紙面の都合上、これ以上は踏み込めない。

 さて、そもそも管理組合とは、どのような形で構成されてきたのか。そのルーツを探索したことがある。その名称はどうも、旧宮益坂ビルディング(渋谷区)、旧四谷コーポラス(新宿区)、阿佐ヶ谷住宅団地(杉並区)辺りが発祥の地の様だが、マンションの管理というと一般に、①管理窓口業務、②収納会計、③清掃、④給水・排水、さらに加えると⑤植栽といったものが代表だろうか。阿佐ヶ谷住宅の事例からすると、①から④は当初、U Rが担い、第一次の「自主管理」への転換で、これが区分所有者の団体による意思決定によって担われる構造となる。この団体の名称が管理組合だ。

 60、70年代になると、この自主管理が極々一部とはいえ更に変容する。第二次「自主管理」の登場である。非常に雑駁な捉え方からすると、ほぼ区分所有者が①、②をも担うのである。筆者としては、「戦後民主主義の発露」という風に捉えていたのだが、62年区分所有法が幅広く構成されていた為に、管理の主体にも当然に幅が生じたのであろうと思われる。

 ところで、今度の区分所有法の全体像はというと、中間試案までの過程で、「二つの老い」への対応を軸に、綿密な手続きの羅列がある。コンセンサスの緩和を踏まえ、これらを議論し制度化する運びとなるのだろうが、この手続きを担うべき管理組合へのフォローの確立も一方で重要度を増すのではないか。最も危惧される点だ。

 因みに、法務省民事局参事官室が提示した「中間試案の補足説明」は136頁に及ぶ。全体像の把握のために概観すると、管理、再生、団地、被災区分所有建物別に四大方策に区分され、更にその方策ごとに、決議の円滑化、財産管理制度、多数決要件の緩和といった計17分野に分割され、これを更に具体に所在等不明区分所有者を集会決議の母数から除外する仕組み、建物、敷地等の一括売却、一棟リノベ等々全29項目に細分化している。

 項目別に見てみると、既にA案、B案、C案といったように議論の煮詰まりかたを示しているものもあれば、提案の趣旨等の補足説明がなされているにとどまるもの等様々である。

また、先月1日には、第10回部会が行われ、マンション管理業協会、管理士連合会、計画修繕施工協会、再開発コーディネーター協会、東京都、京都市など関連団体による中間試案への意見陳述等が行われている。

 改正案がどう法制化されるかについては、大いに興味をそそられるところではあるのだが、俎上が大きく(これまでの議論と新たな手続きの多種多様化)、料理が難しい。新たな政策と政策がバッティングしてしまわないのかといった些かの不安も同居する。先ずは繊細な眼差しで今後を見つめよう(この項おわり)。

6月の「区分所有法制見直しPDF」1頁目から

 5年以上もの間、ご購読いただき有難う。JS.ミルの著「自由論」を彷彿させるような、管理組合の実像・実現を切に願っています。

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員 竹田 智志

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年9月号掲載)