マンションの老朽化等に備え、マンション関連法を改正 「マンション管理適正化法、マンション建替え等円滑化法」(2020年7月号掲載)
先月会期末を迎えた第201回通常国会で、マンションに関わる二つの法律の改正案が全会一致で成立し、2022年までに施行となる見通しだ。マンション管理適正化法、マンション建替え等円滑化法の二法の改正だが、いずれも今後急増することが見込まれる高経年マンションに対応するための法改正となっている。今回の法改正により、いったい何が変わったのか。
国土交通省によれば、築40年超のマンションは現在の約81万戸から10年後には約2.4倍の約198万戸、20年後には約4.5倍の約367万戸となるなど、建物の老朽化が進むとともに、管理組合の担い手不足が顕著となり、適正な管理が困難となる恐れのある高経年マンションが急増する見通しとなっている。
マンション管理適正化法の改正
そのため、老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するためのマンションの維持管理の適正化が今まで以上に必要となるが、従来のマンション管理適正化法では、国や地方公共団体の役割について、「マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない。」とするのみであった。
しかし、今回の法改正により、国や地方公共団体の役割を明確に、かつ強化することで、マンション管理の適正化の推進を図ろうしている。
ⅰ 国はマンション管理のための基本方針を策定
国土交通大臣はマンション管理の適正化を推進するための基本的な方針を策定する。
ⅱ地方はマンション管理適正化計画を作成
地方公共団体は、国の基本方針を受けて、管理適正化の推進を図るための施策を定めた「マンション管理適正化推進計画」を作成できることになった。そして当該地方公共団体内の管理組合に対し、管理適正化のために必要な情報提供を行うほか、必要な時は指導・助言を行い、さらに、管理組合の運営が著しく不適切なことを把握したときは、勧告を行えることとした。
そのほか、管理組合がマンションの修繕や管理方法、資金計画等を定めた「管理計画」を作成し、それを都道府県知事に申請し、内容が各都道府県が掲げる基準に適合するときは計画を認定する「管理計画認定制度」を創設した。
このようにマンション管理に国や地方公共団体の関与を従来より強めることで、高経年マンションの維持管理の適正化を図っている。
マンション建替え等円滑化法の改正
一方で、老朽化が著しく進み、維持修繕等が困難となり、建替え等を行う必要のあるマンションの再生も図る必要がある。
そのためマンション建替え等円滑化法が改正された。
同法改正の要点は以下の2点。
ⅰ 要除却認定対象を拡充
まず、同法では2014年の改正で、旧耐震基準で建てられたマンションが、特定行政庁により要除却認定マンションとされた時、区分所有者等の5分の4以上の同意でマンション及びその敷地の売却を行うことが出来る「敷地売却制度」が出来たが、今回の改正で要除却認定の対象に、次の3つが新たに追加された。
①外壁の剥落等により、周辺に危害を生ずるおそれがあるマンション等
②給排水等の配管設備の改修工事が困難で、それらの腐食等により、衛生上有害となるおそれがあるマンション等
③高齢者・障害者等の移動を円滑にするバリアフリー性能が確保されていないマンション等
ⅱ 敷地分割制度の創設
2014年に創設された敷地売却制度を団地型マンションに適用する場合は、全員の同意が必要とされてきたが、前述の要除却認定を団地内の一部の建物が受けた時、区分所有者等の5分の4以上の同意により、マンション敷地の分割を可能とする「敷地分割制度」を創設し、敷地分割により要除却認定マンションの売却・建替えを円滑にする。
同法改正により、要除却認定の拡充や敷地分割を可能とし、併せて建替え時の容積率を緩和することにより、高経年化したマンションストックの再生を図る。
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年7月号掲載)