新たな融資制度等でマンションの大規模修繕工事を後押し マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会

 独立行政法人住宅金融支援機構が事務局を務める「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」は、昨年度の取組及び今年度の方向性を3月に公表した(表1参照)。

 同協議会はマンション管理関係団体や民間金融機関、行政機関、有識者等で構成され、高経年マンションが適切な修繕工事を継続する上で、金融インフラ整備の観点から特に重要な課題を左記の3つにわけ、さらに課題に対する具体的な取組みを検討している。

課題1 管理組合支援の取組(情報の非対称性の解消等)

 昨年9月、同協議会は、築年数などに応じたマンションの「平均的な大規模修繕工事費用」や、今後40年間の「修繕積立金負担額」などを無料で試算できる「マンションライフサイクルシミュレーション」をリリースした。

 しかし、同シミュレーションでは、単棟型で戸数100戸以下等の比較的小規模なマンションの場合、比較的正確な試算がでるが、団地型や100戸以上等の規模の大きなマンションの場合、試算結果に乖離があった。そこで、規模の大きなマンションでも試算できるよう改善を行う。

 そして、昨年6月のマンション管理適正化法の改正を受け、策定が予定される国のマンション管理の新制度の内容との整合性を図るための対応も今年10月を目途に行う。しかし、国の議論が現在進行中ということもあり、機構担当者によれば「国の議論の状況を見ながら、随時対応を行っていく」ということだ。

 また、今年度中に「マンション大規模修繕ガイドブック(仮称)」を作成し、シミュレーション結果の活用方法の詳細解説のほか、マンションの年代別の仕様の特徴に応じた修繕工事の選択肢や資金的課題の解決方法等を掲載する予定となっている。

課題2 管理組合向け融資における民間金融機関の参入支援の取組

 機構は、高経年マンション等で不足した修繕積立金の資金確保を支援するため、新たな融資メニューとして、将来の修繕積立金を一括払いする「区分所有者向けリバースモーゲージ融資」を4月から開始した。

 リバースモーゲージとは自宅を担保に融資を受け、返済は金利のみで、元金は自宅所有者の死亡後に自宅を売却して返済する制度。一般のリバースモーゲージでは融資金の使途は自由だが、このリバースモーゲージは修繕積立金の前払いで、使途は共用部分リフォーム工事に限られる。

 そのため、融資が確実に共用部分リフォーム工事に利用されるよう、資金使途や管理組合の会計処理等を機構が定める融資条件に改める必要がある。

 具体的には、
・融資金を修繕積立金の前払金として管理組合が一括して代理受領
・融資金は修繕積立金のみに充当し、共用部分リフォーム工事に使用
など、管理規約の改正が必要になる。

 融資を受けた区分所有者は、修繕積立金の支払いがなくなり、生活に余裕が生まれ、管理組合としても、確実に修繕積立金を得ることが出来るが、規約改正のための合意形成に向け、十分な準備が必要となる。

 そのため、機構担当者によれば「融資を希望される方や、個々の管理組合によって、いろいろ事情が異なると思われるので、まずは事前相談をさせていただくところから始め、事例を積み上げていきたい」とのこと。

 また、民間金融機関の参入を支援するため、機構保有データ等を活用した管理組合向け融資の「与信モデル」の構築及び当該モデルを活用した「管理組合向けサービス」の展開に向けた取組を開始する。

課題3 共用部分リフォーム融資の商品性改善に関する取組

 昨年は、工事費の8割以内だった融資限度額を10割以内とするなどの改定を行った。

 今年度は戸当たり限度額(現行1500千円/戸、耐震改修工事の場合は5000千円/戸)及び非住宅割合(現行4分の1超の場合は非住宅部分は融資対象外)の撤廃を7月に予定している。