長期修繕計画と大規模修繕工事の基礎講座 4
■長期修繕計画の見直し
外壁の大規模修繕や給排水設備の改修など、いろいろな計画修繕工事を実施するための原資である修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき定めることが原則とされます。
ただし、長期修繕計画において設定した計画修繕の内容や時期はおおよその目安であり、推定される工事費用も概算です。計画修繕工事を実施する際は、事前の検討段階において、建物や設備などの調査・診断をおこない、その結果に基づいて内容や時期を判断する必要があります。
修繕積立金の額についてもマンションの経年状況はもちろんのこと、社会や経済情勢もたえず変化します。適時適切な計画修繕を実施していくためには、長期修繕計画を一定の時期に見直して、常に変化する状況に適応させていくことが最も大切なことといえます。
■長期修繕計画を見直すタイミングと修繕積立金の積み立て方法
長期修繕計画の見直しは、大規模修繕工事と大規模修繕工事の中間の時期に単独でおこなう場合や、大規模修繕工事の直前に基本計画の検討にあわせておこなう場合、または大規模修繕工事を実施した後にその実績を踏まえておこなう場合などがあります。
修繕積立金の額も長期修繕計画を見直しにあわせて改定額を検討しますが、修繕積立金の積立方法には一般的に次のものがあります。
①均等積立方式
長期修繕計画の作成や見直し時に長期修繕計画の期間中の積立金の額が均等となるように設定する方式
②段階増額積立方式
当初の積立額を抑え、段階的に積立額を値上げする方式
修繕積立金の額は、できれば計画期間全体にわたり大幅な資金的な不足を来さぬよう検討するのが理想的であり、将来にわたって安定的な修繕積立金を確保する観点からは、「均等積立方式」が望ましい方式とされます。
しかしながら、一度にあまりに大幅な値上げを図るのは、区分所有者の合意形成を図るうえで難しい場合が少なくありませんし、不確定な要素が内在する長期修繕計画の特性を勘案すると、あまりに過剰な負担になる場合も考えられます。
■長期修繕計画見直し時における修繕積立金額の再検討
一般的に築30年代から築40年代には窓や給排水設備の改修といった高額な工事が見込まれるようになります。長期修繕計画は5年程度ごとに見直すのが望ましいとされますが、築10年代に実施されることの多い1回目の大規模修繕工事の前後に長期修繕計画を見直す場合、それまでの計画期間には計上されていなかった高額工事が追加されることで、計画期間中の推定修繕工事費が増加し、修繕積立金の額の増加も必要となる場合が少なくありません。
物価の上昇や性能向上的な改修の必要性が高まることも考えると、均等方式で長期修繕計画を作成あるいは見直ししたとしても、その後の計画見直しにより増額となることを前提としておく必要があるといえます。
特にあらかじめ段階的に増額する積立方式を採用している場合では、計画の見直しにより、計画の作成当初に想定していた修繕積立金の増加額からさらに増加する場合があることにも留意が必要です。
株式会社スペースユニオン 代表取締役 奥澤健一
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2024年1月号掲載)